岩手県立美術館では、明治以降現代に至る岩手ゆかりの作家の作品を収集し、常設展示をしています。岩手は大正時代に活躍した画家の萬鐵五郎をはじめ、絵画、彫刻、工芸の分野で多くの重要な作家を輩出している土地です。戦後も多くの作家が活躍しております。
岩手県立美術館が企画する、現代の県人作家の活動に焦点を当てた展覧会として、その最初の作家に、岩手に生まれ、イタリアで活躍した画家・千葉勝を取り上げます。
《シエナ'77》1977年 世田谷美術館蔵
千葉勝は、岩手県水沢市(現・奥州市)出身で、好んで使っていた"バーント・シエナ(焼けたシエナ土)"という褐色の絵の具の名がイタリア・トスカーナ地方のシエナに由来することを知り渡航、生涯シエナの街と自然を愛し、それらを描き続けた作家です。
画面には古都のたたずまいやイタリアの風土から得た心象が描かれますが、一方で和紙や箔を用い、ときに書や障壁画などを思わせる作風は、西洋と東洋の伝統の融合ともいえる独自の境地を切り開きました。またタブローにとどまらず、陶板やステンドグラスなど、創造の幅を拡げてゆき、豊かな展開を見せました。
これまで油彩画を中心とした展覧会は開催されたことがありますが、版画、陶板、ステンドグラスのほか作家が遺した多数のスケッチ、デッサン作品をあわせた大規模な回顧展は本展が初となります。作品、資料あわせて約120点を展示し、シエナに深く魅せられたひとりの画家の軌跡をたどるとともに、あらためてその魅力に迫ります。
《なか空》1970年 岩手県立美術館蔵
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