今回は、解剖学を学びなから制作をしている亀井三千代作品をご紹介致します。
空想ではない形、臓器と植物を重ね合わせ、自らの疑問に答えを出しながら描き出した作品からは、冷静さと情熱を同時に感じます。
"いのちのかたち"と題しました。まずはご覧下さい。
いのちのかたち
幼い頃から絵を描くことが好きだった。特に、ぐるぐると渦巻き模様をいくつも描くこと、丸いかたちを次々に増殖させて描くことが大好きだった。やがて、そんな好きなかたちは、自分のまわりに驚くほどたくさんあることに気がついた。かたつむり、蜘蛛の巣、花の蕾......。
小学生になった頃、自分が生きていることに突然不安を感じ始めた。"死"を意識したのだ。私は、今は生きているけれど将来必ず死ぬ。すべての人間が、すべての生命が、"死"に向かって生きている。それは非常に暴力的な現実だった。すると、その儚い"命"というものを閉じ込めている、自分の体が気になって仕方がなくなった。肉体こそ"命"の住処ではないだろうか。大人になって解剖学に興味を持ったのも、自分の肉体に秘められた"命"の実態に、少しでも迫りたかったからである。
そして解剖図を学びながら、多くのことを知った。人間の身体をつくる形態の多くがねじれながら出来ていること。ただひたすら生きるために進化してきた形態は合理的で美しく、自然界にある様々なかたちとよく似ていること。皮をはいだ人間の肉体は、まさに動物そのもので野生的なのだ。そんな体験を積み重ねていくうちに、幼い頃に描いていた渦巻きや丸いかたちの連続が甦り、次第に人間の臓器のかたちが重なり合わさるようになった。それからだろう、私と私の周囲の自然には、おなじ"命"のかたちが息づいていると感じたのは......。
亀井三千代
〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-11 湯島ハイタウン2F
TEL: 03-3815-0431