冬の浜辺は人が訪れることの少ない静かな場所ですが、そこにいて人は不思議と孤独を感じないことがあります。見えるのは海と空と浜の灰色の風景ですが、耳を澄ますと胎動する小さな音たちの響きを聴き取ることができるからではないでしょうか。
この冬、茅ヶ崎海岸に近い美術館で手法が異なる二人の現代作家のコラボレーションによりひとつの風景が創り出されます。
田中みぎわ(1974-)は水墨のみずみずしい手法をもちい、土地から汲み取ったインスピレーションを墨のひろがりに重ね、大気の現象である気象と私たちの心に直感的に思い浮かぶ心象が不思議と溶け合い、無限の宇宙につながることを予感させます。
田中みぎわ 《天の息吹》 2009年 個人蔵 撮影©末正真礼生
留守玲(1976-)は鉄を素材に溶接・溶断・鍛金の手法により日常的な器や装身具のほかに巨大なオブジェを制作しています。形が定かでない心象を具現するような複雑に入り組んだ金属の塊は力強く、見る者の心に落ちていく不思議な力を秘めています。
留守玲 《森?下向きに生える100の麟角》 2006年 個人蔵 撮影©末正真礼生
留守玲 左から 《路刈》、《Bud》、《冬芽》、《山桜》、《道草》 すべて 2009年 個人蔵 撮影©末正真礼生
本展では料作家の新作を含む作品をご覧になれます。新しき年を迎える神聖な季節、平面と立体が境界をこえて響き合い、新世界に向けて噴出するうねりを感じていただけるでしょう。
〒253-0053 神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
TEL:0467-88-1177