『夢を見ない夜・・・』展
「mono ロリータとしての定義と深層表現」
幼少時の経験、、記憶、趣向等が無意識に今の自分に反映されてしまっていることは皆誰もが持っていることでしょう。
それは例えば、ハンバーグやカレーなど、子供の時に好きなmonoがそのまま大人になっても好きであり続けるというようなことでも表現できるかもしれません。趣味趣向の根源にあるものとして、小さい頃から見てきたアニメ、玩具、雑貨などをセレクトし、インプット&アウトプットする時に自然と出てくるカワイイmono への執着。玉ノ井は、そんな「カワイさ」、「幼少時からの味覚の記憶」から『スイーツ』というキーワードを紡ぎ出します。身の回りのmonoに対する幼児趣向的意識を『mono ロリータ』という言葉として定義し、『スイーツ』というモチーフをベースに深層意識を具現化するということが今回の展覧会の意図するところでもあるのです。
「1970、80 年代のアメリカのTVや映画」が玉ノ井に与えた影響は絶大でした。「現実的な中に非現実的なことが当たり前のように描かれている」綯い交ぜの世界観に強く引かれる彼の趣向は、「カワイさ」と「残酷さ」という相反するような要素を結んでいきます・・・その象徴的な存在として作品に登場するのが『子供』。「カワイさ」と「残酷さ」、大人の中の子供、子供の中の大人、現実と非現実。それを、記憶という出来事「koto」から物質「mono」へ結晶化させるため、立体と写真という表現手段を用います。
さらに彼の意図は、生と死の究極の二項対立への問いの投げかけでもあります。作品を前にした我々が、一瞬カワイいと判断した先にふと見え隠れする「残酷さ」や、鏡のごとく反転してみえてくる自己の欲望、そして幼かったはずのじぶんが死へと直線的にむかっているという恐怖にも、ふと気付くことになるのです。ただ、そこには、「作品とは自らの墓をつくるようなものである」とあるフランス人が語ったような死への畏怖とともに、ある潔さ、まっすぐに「生」と「死」と向き合う姿勢や、希望といったものも感じられるはずです。
チョコレートの巨大なオブジェが、手をかざす子供の眼前であたかも壁のように、また墓碑のようにも見えてくる不思議さは、「カワイさ」と「残酷さ」、「生」と「死」の抵抗を溶かしうるような奇妙な明るさをもって我々に迫ってくるとともに、人間独特の時間概念や、精神の奥にあるものをあらためて感じさせてくれるのではないでしょうか。
玉ノ井哲哉
広告美術デザイン / 製作
2008年MORI YU GALLERYに作家として所属
同年『アートフェア東京』に出品
今回の展覧会が初めての個展になる。
広告美術界での活動の傍ら 2007年に雑誌『MILK』で発表した世界をシリーズ化!
アーティスト公式ホームページ:http://www.tamanoi.org
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