通常、美術館などで見る有名画家の作品以外にも、すばらしい作品が身近に存在していることや、新たな美術活動の取り組みなどを紹介する美術展覧会です。
「境界なきアート」(ボーダレスアート)とは、既存の枠に収まらない美術本来の魅力を持った作品を指します。現代美術界では、今までの美術概念では収まりきらない思いや感情を表現するために、様々な取り組みを行っています。その上で、今まで気づかなかった分野の作品にも、本来の意味での芸術性を備え、社会に必要なものではないか、という考え方が広まりつつあります。
《ライオン》安藤昇
その分野の一つがアウトサイダーアート(別称・アールブリュット≒知的障害者などのアート)で、この地方では豊川養護学校を卒業した辻勇二さんなどが世界で紹介されています。彼らの純粋な発想と独特な表現技法は、見る人により身近な共感と感動を与え、既存の美術界が見落としてきた純粋な表現欲求が感じられます。
また、認知症予防に効果的とされる回想法をアートに取り入れた回想法アートを紹介することも、本展の特色です。高齢者などの人生を聞き取り、美術家が作品化することで、高齢者が人生を振るかえる契機となり、新たな希望を見出す可能性があるとともに、美術家は壮大な人生ドラマを作品化することで、新鮮な感動を表現する機会を得ます。また、鑑賞者は、文章と具体的な作品をあわせて鑑賞できるため、感動をより共有しやすくなります。
《願い》伊藤里佳
その他、人間が本来持つ自由な発想が社会教育によって妨げられる以前の未就学児童のアート作品なども展示します。そこには晩年のピカソが、幼児のように自由な発想で制作したいと望んだ世界が表現されており、地元の昔話をもとに天狗を描いた作品を通して、その自由な表現を感じていただきます。
本展は以上の3本を基軸として構成し、これからの社会で必要となるであろう、重要なアート界の取り組みを紹介します。これからの美術の在り方を見直す、貴重な機会となると考えています。ぜひご高覧ください。
〒442-0064 愛知県豊川市桜ケ丘町79-2
TEL:0533-85-3775