私の芸術表現における手法は、陶という素材を用い、多様な装飾様式や文様などによる具体的または抽象的な彫刻、または陶に彩色、焼き付けされた絵画によって成り立っています。
そして私の作品はしばしば視覚的に、それぞれにおとぎ話や神話など幻想的な物語性、または儀式的な崇拝の対象のような感覚を呼び起こさせるかもしれません。
私が芸術表現に於いてこの表現方法を用いるのはこの陶という素材の要素である脆さや壊れやすさ、繊細さなどが醸し出す危うい緊張感と現代に於いては過剰とも思える装飾的表現が、私たちが生きるこの時代の精神性に何か共通する危うさを感じるからです。
しかしながら私にとっての芸術表現はとても個人的な側面を持っており、私の作品は私個人の夢想や空想のイメージの増殖の結果であるかもしれません、つまり私にとって芸術表現とは制作をすることによって自分の心の奥へ降りて行き、そこに眠っている私の影と出会う行為、または幻想や夢、畏敬や畏怖の念との対話、それは言葉を換えればとても神秘的な体験と言えるかもしれません。
私の、そして私たちの生きるこの時代が、科学技術や文明という光に照らされるほどにそれらの影はより色濃く心の奥底にその輪郭をはっきりとさせるからなのかもしれません。
青木克世
2006年に六本木ヴァイスフェルトで開催された「アールエックス・キューブ・キュービック」にはじまった、レントゲンヴェルケにおける青木克世の作品発表が、愈々個展という形に結実します。
工芸と美術の境目を軽々と飛び越え、無条件の驚きと感動を呼び起こす彼女の作品は、その発表の度に熱狂を持って迎えられてきました。
陶土によるものとは思えない、しかし陶土でなければ為し得ない、超絶技巧による精緻な造形。
ご期待下さい。
本展会期中の11/14(金)から東京国立近代美術館/工芸館にて開催される展覧会「現代工芸への視点ー装飾の力」に青木の作品が展示されます。
こちらも併せてご高覧いただければ幸いです。
「現代工芸への視点ー装飾の力」
2009年11月14日(土)- 2010年1月31日(日)
東京国立近代美術館/工芸館
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
TEL: 03-3662-2666