長谷川時雨(本名・長谷川ヤス1879?1941)は、江戸から東京へと、日本の歴史が大きく転換する時代の日本橋に生まれました。幼いころから二絃琴や歌舞伎の世界に親しんだことがのちの創作に大きな影響を与えます。女ゆえに学業からは遠ざけられ、18歳で望まぬ結婚をし、破綻。孤独な結婚生活の中で文学修業を始め、日本で初の女性歌舞伎作家となり歌舞伎の近代化に貢献しました。
「さくら吹雪」「江島生島」の創作劇や、女性史の先駆けともいえる『美人伝』『近代美人伝』等で人気を博し、さらに女性作家の発掘育成を目指した文芸誌「女人芸術」の主宰者として活躍します。一方で、画家の妹・長谷川春子に〈才色双絶〉といわしめた時雨は、男性から熱い思いを寄せられることもしばしばでしたが、13歳年下の文学青年・三上於莵吉と出会い、作家としての大成を支え、生涯を共にしました。
神奈川とのゆかりは深く、母の経営する箱根町塔ノ沢温泉の旅館・玉ノ湯や、生麦の料亭・花香苑(はなかえん)を手伝い、その近くに家族と生活した時期があり、墓所は鶴見区の総持寺にあります。
本展では、吉川英治に「明治に一葉あり昭和に時雨ありと後の文学史は銘記しませう」と謳われ、明治から昭和に到るまで第一線で活躍した女流作家・長谷川時雨の作品と生涯を総合的に紹介してまいります。
長谷川時雨書 色紙「天かける?」
長谷川時雨の代表作『近代美人伝』と『旧聞日本橋』
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