大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟。23歳で日本美術院同人に推挙され、横山大観や小林古径ら日本画家を始め、安井曽太郎、岸田劉生ら洋画家にも高く評価されてきました。御舟は、40年の短い生涯におよそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」と称されていました。しかし、1976(昭和51)年に旧安宅産業のコレクションの御舟作品105点が山種美術館の所蔵となり、従来からの作品とあわせて御舟コレクションが充実したことは大きなニュー
スとなりました。初めての御舟の大回顧展として話題となった、33年前の「特別展 速水御舟―その人と芸術―」には8万人を超える来館者がありました。
新美術館開館記念特別展では、当館所蔵の≪炎舞≫≪名樹散椿≫(重要文化財)を始めとする120点の御舟作品に加え、本邦初公開となる未完の大作≪婦女群像≫(個人蔵)、および1930(昭和5)年の渡欧日記(個人蔵)も展示します。これらの新出資料を通じて、40歳の若さで急逝した御舟が新たに目指していた方向性が明らかになることでしょう。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。(中略)登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である」と語ったとおり、彼は常に挑戦者であろうとしました。その生涯を通じて、短いサイクルで次々と新しい試みに挑み続けたのです。本展では、山種コレクションの御舟作品をすべて展示されます。この機会にぜひご高覧ください。
速水御舟 《翠苔緑芝》 1928(昭和3)年 再興第15回院展 紙本金地・彩色 山種美術館蔵
速水御舟 《埃及所見》 1931(昭和6)年 遊欧小作展 紙本・彩色 山種美術館蔵
速水御舟 《牡丹花(墨牡丹)》 1934(昭和9)年 紙本・墨画彩色 山種美術館蔵
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