本展は、20世紀以降の美術に甚大な影響を与えたフランスの美術家、マルセル・デュシャン(1887?1968)が考案した「アンフラマンス」(Inframince:直訳は「極薄」「超薄」)という造語から発想したものです。
デュシャンはある状態が異なる状態へ移行するときに生まれる微妙な境界域をこう名づけ、そこに芸術の源泉を見出したのではないかと推察されています。
たとえば、デュシャンは人が席を立ったあとに残る温もりをアンフラマンスだとしています。
誰かが「いる」状態から、その痕跡が完全に消えた「不在」の状態へ移行する間には、その人の微かな体温のみが存在する境界域があるからです。これにならえば、夜が明けてなお早朝の空に消え残る月もまた、アンフラマンスと言えるでしょう。
本展では、月光(≒アンフラマンス)に類縁する精神性を感じさせる中世から現代までの美術作品を二部構成でご紹介します。
第一部は中世以降の仏画、円山応挙などの日本美術、あるいはターナーらによるイギリスの風景画の中に、それぞれの時代の自然観にもとづいた崇高な美と精神的な次元への移行を探ります。
第二部では、自然学的とも言うべき独自の方法論によって創造され、深い精神性を見せる現代美術の作品の魅力に迫ります。
時代と文化の異なる作品それぞれの色彩が静かに響き合う展示空間で、未来の芸術の行方に想いをはせてみてはいかがでしょう。
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