一見すると、抽象化された非具象絵画だという印象を与える瀧梅岡真理子の作品には、必ず具象的な要素が残されている。
それらの中の一点「華やかな哀しみ・夏」もまた、暗い森の<明と暗>の対照を示している。破綻のない色調の統一と透明感あふれる画面には、迫力漲るスケールの大きさが実現され、細部にはデリケートな筆触が重ねられていて、見る者を永遠へと引き込んでゆく。
スペインと日本を行き来しながら制作活動を続けてきた瀧梅岡は、スペインでもあり日本でもある錯綜した不思議な世界に分け入った画家である。大胆さと繊細さ、バイタリティと奥ゆかしさ、これらの相反する性格の融合こそ、彼女の人柄とその絵画の見所だといってよい。
中谷伸生(美術批評家・関西大学教授)
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