目は口ほどに物を言う。
例え口許は笑ってみせても、その目がぴくりとも笑っていなければ、その人の心の内に喜びや楽しさを見出すことは出来ないだろう。
そしてまた、泪をいっぱいにたたえた瞳には悲嘆や無念の意識だけではなく、それが洗い流された後の希望も宿っている事を、知る必要がある。
近作では顔を描いたシリーズが専らであり、今回の東京での初個展も「FACE」と題されたシリーズが中心となるが、実は橋本の世界観は顔の上だけでは終わらない。未公開のドローイングでは一角獣や寿司、植物と動物が一身化した奇天烈な生き物を描くなど、イメージの広がりは物の存在、形状など多岐に渡る。
やはりどれにも印象的な顔があり、特に目の存在は一際大きく描かれている。今回の顔の絵は作家の全貌の一端を見せるに過ぎないが、ある意味では顔は橋本のメッセージが凝縮された「世界」でもあるのだろう。美の理想としてでも、いたずらな空想の産物でもない、私達の生きる時代に確かに存在するはずの顔。
はたして瞳の中に漂うのは、刹那の瞬間に生きる蛍のような人間の煌めきか、あるいは存在を具現化することなく彷徨う現代の魂か・・・。
〒107-0062 東京都港区南青山二丁目17-14
TEL: 03-3402-3021
http://www.neutron-tokyo.com/