作家にとって6度目の個展となる本展では、ペインティングを中心に、写真作品や大理石を使った新作を合わせて展示いたします。
高橋淑人のペインティングは一見、現代美術で多く見られる抽象画のように見えますが、極めて特異な技法で制作されています。中でも、コンクリートの上にアクリル絵の具を垂らし、和紙をかぶせて布でこするという高橋の代表的な技法は、素材同士が接触し浸潤する過程によって、独自の色彩の調和を生み出しています。
高橋のペインティング作品の多くは、表面が均一ではなく、常に光と影を象徴する濃淡や、陶芸の釉を思わせるような斑点が存在します。そこには抽象表現主義に見られる「オールオーバー(all over)」とは異なる、東洋美術独特の質感や、深遠な世界観を見ることができます。
古美術商を営む家庭で育った高橋は、東洋美術の物質感や抽象的形態の成り立ちに多大な影響を受けているといいます。自然と人間の共存を謳う東洋的な自然観を、自身の存在や日々の有様とともに渾然一体と表現しており、それらが独自の諧調となって作品に現れるのです。
本展では近年制作されたペインティング作品のほかに、大理石をフレーム代わりに使用した小作品を発表する予定です。私達の日常の営みを入り口として、読解きを超越した世界それ自体へと観賞者をいざなう美術。高橋淑人の深閑とした作品を、是非この機会にご高覧下さい。
Work 2007-B5 ミクストメディア、キャンバスに和紙|2007|180x370cm
Work 2009-B2 ミクストメディア、キャンバスに和紙|2009|123x210cm
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