ステンレスやガラスなどを用いた抽象彫刻をはじめ、公共空間における光の造形や壁面作品なども手がけている多田美波の創作活動を紹介する展覧会を開催します。
多田は1979年、彫刻の森美術館開館10周年を記念して創設された野外彫刻の国際公募展「第1回ヘンリー・ムーア大賞展」で大賞を受賞し、のちには同大賞展の審査員を務めました。大賞に輝いた作品《極》は今なお、箱根の風光のなかでシャープで清々しいたたずまいを見せています。
多田は、女子美術大学で油絵を学びましたが、卒業後は立体表現に転じ、構成的な彫刻を制作するようになります。既成概念にとらわれない抽象的なイメージを表現できる新たな素材を模索した結果、ステンレスやガラス、アクリルといった新しい素材に行きつき清新なかたちを追求し続けてきました。
1962年には多田美波研究所を設立。光に関わる造形の仕事を始め、公共建築や劇場、ホテルなどの建築空間に、彫刻及び光の造形や壁面作品等を制作するようになります。1960年代後半からは野外彫刻展に積極的に参加し、その果敢な挑戦と足跡は、環境芸術が世に認知されるまでの道程そのものでした。日本芸術大賞や毎日芸術賞、吉田五十八賞など数々の受賞は、その証といえます。
多田が生みだす作品は円錐であったり、半球のような曲面体であったりと形態は様々ですが、鏡面仕上げが施されたステンレスにまわりの風景が映り込んだり、アクリルやガラスを透かし、また反射して風景が変形して見えるなど、常に周囲の景観と光とが関係を保ちながら存在しています。
本展覧会は、新作を含む彫刻24点を中心に、野外彫刻や建築関連作品の写真パネルも展示し、光を追い求めた彫刻家、多田美波の芸術世界を検証しようとするものです。
《スペース》2009年 ステンレス 撮影:末正真礼生
《澪》1991年 熱線反射ガラス、御影石 所蔵:東京都庁舎議会議事堂 撮影:西川孟
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