久隅守景は江戸画壇の頂点にあった狩野探幽門下の傑出した画家として知られ、17世紀後半に少なくとも2度加賀の地を訪れ、納涼図や一連の四季耕作図などの名作を描いたと考えられています。
当時の加賀藩は、政治面で徳川幕府に屈従を強いられた無念の思いを、卓越した文化政策において晴らそうという気概をもって、名工の招聘や名品の蒐集に意欲的に取り組んでいました。「探幽門下その右に出る者無し」と高く技量を評価されていた久隅守景は、後年何らかの確執があってその門を去りました。そこで幕府に対する加賀藩の心情と同じような関係が狩野派と守景の間に生まれ、そのことがある種の文化的親和力となって、守景は加賀の地で画業を開花させることができたのではないでしょうか。したがって、久隅守景の画業に見られる「漢から和」そして「故事来歴から日常性」への画風転換は、守景のしなやかな反骨精神の表明と解釈することができます。
本展は、このような視点から代表作の国宝『納涼図屏風』(東京国立博物館蔵)の特別公開と、画業展開を知る上で重要な作品を集めて、久隅守景の人となり、加賀の文化風土の影響などを検証しつつ、室町時代から江戸時代にかけての近世絵画の流れのなかで、守景の画業の歴史的意義を再認識するものです。久隅守景を単独で取り上げた展覧会は近年開催されておらず、本展は初の本格的な回顧展となります。
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