「ガラス絵」とは、ガラスの裏面に、普通の絵画とは逆に表に出る部分から先に描いていき、表面から見る絵です。
もともとは、東欧の農民が17世紀末からイコンを制作したことが起源で、日本には、江戸時代に中国のガラス絵が伝えられました。明治末から衰えてしまった大衆絵画のガラス絵を、芸術作品として描いたのが小出楢重で、川上澄生は小出の影響で制作を始めました。
川上澄生が描く南蛮人や南蛮船、聖母子像、明治の女性像などの画題と、ガラス絵の持つ異国趣味的などこか古めかしさの漂う味わいとの相乗効果で、作品がより輝きを増しています。
また肉筆作品には、木版画とは異なった味わいがあります。木版画はしっかりとした輪郭線のおおらかな作品が多いのに対し、肉筆画には、非常に細かい筆致の繊細な作品が目立ちます。
川上澄生は、生涯に相当の数の肉筆作品を制作しましたが、親しい者のために特に制作したものが大半であるだけに、木版画ほど目にする機会はありません。本展では、川上澄生美術館所蔵の貴重な肉筆作品をご紹介し、木版画とは異なる面をご覧いただきます。
〒322-0031 栃木県鹿沼市睦町287-14
TEL:0289-62-8272