大下藤次郎(1870?1911)は、明治時代に活躍した水彩画家です。明治30年代半ば、日本に空前の水彩画ブームが起きました。1901(明治34)年に著書『水彩画之栞』を発表し、ブームの一翼を担った大下は、海外や日本各地を精力的に旅して、その風景を水彩で描きました。水彩画の専門雑誌「みづゑ」を創刊し、水彩画普及のための講習会などもさかんに行ない、身近な画材として水彩が人々に浸透していきました。
また大下は、福島も数度訪れ、猪苗代や桧原湖、尾瀬などを描いた作品も残しています。風光明媚で変化に富んだ福島の自然は、大下の心を深く捉えたに違いありません。
今回は、島根県立石見美術館の所蔵品から、名品約80点と、絵葉書を初めとした資料類を展示します。清々しい色彩と細やかな筆づかいによって描かれた大下の水彩画は、多くの人の心に清新な風を運び、また郷愁を誘うことでしょう。
「猪苗代」明治40(1907)年 水彩・紙 島根県立石見美術館蔵
「多摩川畔」明治40(1907)年 水彩・紙 島根県立石見美術館蔵
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