ヨナタン・メーゼの作品はペインティング、彫刻、インスタレーション、そしてその中で自身が行うパフォーマンスなど、多岐にわたります。モチーフにはワーグナーやヒットラーといったドイツの歴史的な重要人物が頻繁に登場する一方で、ハリウッドスターや童話・漫画のキャラクター、娯楽映画の登場人物たちが乱入し、ユーモアと危険に満ちたカオティックな世界を作り出しています。
昨年、横浜トリエンナーレにおいては、[DICTATORSHIP OF ART(アート独裁政権)]と大きく書かれた空間で、インスタレーションとパフォーマンスが発表されました。ヌイグルミを使ったり、スカーレット・ヨハンソンのポートレートと戯れたりと、コミカルな動きで笑いを誘いながらも、合間合間に「ハイル・ヒットラー」のポーズをとり、[Yokohama Manifest] のビラをばらまき、大声でアジテーションを行うメーゼは、芸術という行為を信奉してやまない敬虔な信者のようでもありました。マニュフェストに書かれた「アートとは、総合的プロパガンダ」「アートとは、絶対的中立」という言葉には、すべての権力構造や政治、ヒエラルキーを無効にしてなお、人々を魅了する圧倒的なプロパガンダとして機能し得るというアートの究極の力を、真摯に追求する作家の姿勢が込められています。
東京生まれのドイツ人アーティストであるヨナタン・メーゼにとって、幼年期を過ごした日本におけるヒーローはどうやら三島由紀夫のようです。どのような展示内容になるのかは全く明かされていません。横浜での展示から1年ぶりに来日するヨナタン・メーゼが挑む『ミシマ・イズ・バック』展を、どうぞこの機会にご高覧下さい。
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