天平?鎌倉時代に進化を続けた仏像様式は、江戸時代には過去の様式を真似ることを中心とした停滞期に入ります。そんな時代に活動した造仏聖・円空と木喰は、都を離れ地方を巡る行脚僧として布教活動をしながら独創的な仏像や神像を彫り歩きました。その作品は現在、江戸期木彫仏を代表するものとして注目を集めています。
荒々しくも自由奔放で力強い木彫仏を数多く残した円空と、表情豊かな「微笑仏」と呼ばれる仏像様式を確立した木喰。主に庶民との交流を通して彼らが彫った木像の多くは、庶民の信仰の対象として守り伝えられてきました。
版本「近世畸人伝」に記された円空像
円空・木喰の名はその死後しばらく忘れ去られていましたが、彼らが地方の寺社に残した木像の造形に魅せられた20世紀の研究者や美術作家らによって、その業績が掘り起こされます。仏の姿をデフォルメ化した粗彫りの木像は、アカデミズムな美術には見られない表現として全国的ブームとなりました。円空・木喰の独創的かつ木の素材感を強調した造形は、西洋彫刻に染まりつつあった近代日本の彫刻家の目にも革新的に映り、彼らの制作に大きな影響を与えています。
本展覧会では、円空と木喰の仏像や神像、あわせて約200体が集結します。時代を超えて人々を魅了する2人の造形を展観できる貴重な機会となります。
木喰《子安観音菩薩》光明寺(愛媛県)
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