参詣曼荼羅とは、中世以降、社寺の縁起などの絵解きに用いられたもので、本図も布教に用いられたものと思われます。
本図は内宮・外宮を左右の2幅に分けて描いたもので、伊勢神宮への参詣で必ず訪れる宇治橋や五十鈴川といった名所や、人々の賑わいの空間を生き生きと描き込んでいます。
本展覧会では4点の伊勢参詣曼荼羅を展示しますが、そのうち本作品を含む3点は、当館では22年ぶりの公開、海外から里帰りするパワーズコレクション本は大阪歴史博物館では初の実物公開となります。
伊勢神宮は、古くから今日に至るまでさまざまな人々から敬いと親しみをもって信仰されてきました。
その伊勢神宮で20年に一度、神殿から神宝まで新しく造りかえ、御神体を新宮に遷す「式年遷宮」は、約1,300年間にわたって継承され、平成25年(2013)に第62回を迎えます。
この展覧会は第62回を迎える式年遷宮を記念するもので、伊勢神宮の神宝はじめ、『古事記』(国宝)などの古文書や考古遺物、絵画、彫刻、工芸品から伊勢神宮の歴史と信仰、遷宮の様子をたどるとともに、遷宮による工芸の伝統技術の継承や神道美術にも光を当て、日本古来の宗教美術の精華を披露いたします。
【国宝】古神宝類のうち橘蒔絵手箱及び内容品 明徳元年(1390年) 和歌山・熊野速玉大社蔵
熊野速玉大社に伝わる古神宝類は、文献史料により調進年代や納められた宮が分かる点など、現存する古神宝類の中でも特筆すべき品々です。特に手箱は、熊野速玉大社の十二社及び摂社一社へ奉献された記録と、現存する十三合の手箱の図柄等が一致する点が貴重で、この作品は十二社のうちの聖宮(ひじりのみや)に納められたことがわかっています。
梨子地(なしじ)に螺鈿(らでん)や切金(きりかね)を交えて橘の樹と岩を表した手箱の中には、鏡などの化粧道具類が納められています。
【重要文化財】男神坐像(だんしんざぞう) 9世紀 京都・松尾大社蔵
松尾大社は京都を代表する古社のひとつです。本像は、頭と体幹部を一材から彫出し、内ぐりを施さないという平安初期の特徴を備えていることなどから、現存する神像の中でも最初期に位置づけられる作品であると考えられています。威厳に満ちたいかめしい表情は、人々を護る存在としての神に対する畏敬の念の現れともいえます。
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