2002年「細密版画の魅力」展、2007年「鉛筆と黒鉛の旋律」展と展開してきた、線の物質的で繊細な豊かさをフォーカスした「線の迷宮シリーズ」。今年は、その番外編として、「詩画集」「ポートフォリオ」がもっとも輝いた70年代の、版画集を中心に展示します。
版画にとっての70年代は、日本の版画が独自に発展し、多くのユニークな作品が活発に制作された重要な時代です。東京国立近代美術館で隔年に開催されていた(京都国立近代美術館に巡回)東京国際版画ビエンナーレをはじめ、海外でも旧ユーゴスラビアでの「リュブリアナ国際版画ビエンナーレ」やクラコウでの国際版画展などが盛んに開催され、これらの国際的な版画展に、日本からも多くの作家が出品、または招待出品し、日本の作家が国際的にも高く評価され、表現を生み出す技術においても実験的にいろいろなことが行われ深化していきました。
さらに、この時代の版画は、銅版画、木版画、石版画に加えて、写真製版や、コピーなども多用され、新しいメディアの手法を取り入れた表現も多くみられるようになり、時代をするどく反映しています。さらに、「版」という解釈を拡大して広い視点からとらえる作品も生まれます。
版画集「わらべ唄」より 「かたつむりと花子」
秀島由己男(ひでしま ゆきお)
1974 年/銅版画(メゾチント) 紙/ 38.0x32.0 (イメージサイズ)
版画にとって充実したこの時代、作家と画廊が丁寧に作り上げていったポートフォリオや、詩人とのコラボレーションによる詩画集など、密度のある凝縮した宇宙を思わせる版画集として本の形態を持つ表現も次々に制作、出版され、市場にもそうした活気がありました。
今回の展示では、目黒区美術館がコレクションした版画集や詩画集を元に、70年代を中心とした版画の一断面を振り返ります。そして、その時期制作された、ユニークな版画の行程見本なども加えて展示します。
版画集「酔いどれ船」より 「5」
深沢幸雄(ふかざわ ゆきお)
1982 年/銅版画(メゾチント) 紙26.0x20.0 (イメージサイズ)
〒153-0063 東京都目黒区目黒2-4-36
TEL:03-3714-1201
http://www.mmat.jp/