同時代のアートの動向を探る試み、シリーズ「アート・ビジョン」では、その作品世界が国内外において確かな存在感を示す画家 小林正人をご紹介します。
小林正人(1957?)は、1984年に東京藝術大学美術学部絵画専攻を卒業した後、東京国立のアトリエで「天使」「空」をモチーフに制作、画廊や美術館でのグループ展に多数出品します。'94年には透明でピュアな光そのものを出現させた《絵画の子》が、第1回VOCA展奨励賞を受賞。また'96年のサンパウロビエンナーレでは日本代表に選ばれるなど注目を集めます。'97年にはゲント市立現代美術館館長ヤン・フート氏の誘いを受けてベルギーに渡り、2006年までの9年間を
ゲントで過ごしました。
小林は、張られていないキャンバスに、チューブからとった絵の具を手で直接塗り込めながら徐々にキャンバスを張ってゆく、まさに素材と一体となりながら絵を作り上げてゆきます。それは、作品を取り巻く空間との関係性も含めて、絵を描くというより空間全体を新に描き出そうとする表現行為にも思われます。
ゲント滞在中には、宮城県美術館(2000)、ゲント市立現代美術館(2001ベルギー)、テンスタ・クンストハーレ(2004スウェーデン)の個展の他に、中世の塔や納屋、修道院などでの現地制作を試み、絵画の新たな可能性を提示しました。
日本の美術館での9年ぶりの個展となる今展では、小林の初期東京時代の代表作《白ペンキの天使》、ゲント時代のヌード《Unnamed 2003#3》、そして帰国後瀬戸内海をのぞむ広島県福山市で描かれた《Light Painting》や今展のための新作《この星へ》など約20点を展観します。
この夏、成羽美術館でしか目にすることの出来ない「この星の絵の具」によって描き出された景色を是非ご覧ください。
《Light Painting#3》2007年 油彩・キャンバス、木
〒716-0111 岡山県高梁市成羽町下原1068-3
TEL:0866-42-4455
http://www.nariwa.ne.jp/museum/