本展は、現在国内外から高い注目を集めるアーティスト・鴻池朋子の初の包括的な個展です。神話を想起させる象徴的なモチーフがくり返し現われる作品は、鴻池の独特な表現世界を築き上げてきました。スケールの大きな新作とこれまでの代表作によって、展覧会を「地球の中心への旅」にした本展は、これまで垣間見えていた個別の物語が壮大な神話に結実していくさまを、皆様に実感していただく機会となることでしょう。
ギャラリーの中に一歩足を踏み入れるとそこは既に地球の中。人間の心を地球というひとつの惑星としてとらえ、その深い闇の中へ旅をする物語の始まりです。観客は想像力の旅人(トラベラー)となって作品を鑑賞しながら、地球の中心を目指します。
展示は地球の中心に対する「深度」に従って章立てされます。各作品が地殻から地中、地核、地球の中心へと私たちを誘うにつれ、心理的な深度が増していきます。そして本展のクライマックスとなる「地球の中心」では、地球の回転と再生を司る新作のインスタレーション《Earth Baby》(09)に出会い、再び日常へと戻ります。
《シラ ─ 谷の者 野の者》(部分) 2009
182.0 x 1632.0cm 墨、胡粉、金箔、雲肌麻紙
撮影者名:宮島径
写真提供:Courtesy: Mizuma Art Gallery
©KONOIKE Tomoko
本展の経験を通して、作品を見ながら想像力を使って遊ぶだけで、私たちは誰もが日常から非日常への旅に出ることができるのです。
現代を取りまく閉塞感に対するリアクションとして、鴻池はこうした想像力を駆使した「遊び」によって新たな神話を投げかけます。鴻池にとって「遊び」とは魂を呼びかえす技です。それは身体をしばる秩序からの解放であり、人間の肉体の奥底に眠っていた感覚を呼び覚ます術(アート)です。そしてこの旅の主人公は、豊かな想像力を持った「インタートラベラー」という観客ひとりひとりなのです。
《mimio-Odyssey》 2005
DVD 11'30"
写真提供:Courtesy: Mizuma Art Gallery
©KONOIKE Tomoko
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