竹喬美術館は日頃より、竹喬作品と竹喬に係わる諸資料の探査と収集に努めてきました。これにより、従来知られていなかった作品が次々に発掘され、竹喬芸術の多面的な魅力が明らかになっています。また、小野家ご遺族や関係の方々から寄せられた自筆ノートや書簡からは、公になっていなかった竹喬の芸術観や実際の制作状況もかなり細やかに確認されようとしています。
すでにこれまで、展覧会やそのカタログにおいて、順次新出の作品や資料は紹介してきました。ところが、生誕120年を迎えた今年、ご遺族よりさらに多くの作品と資料の寄贈があり、また未公開の書簡が多数発見されるなどの慶事が続き、改めてこれらの作品や資料を紹介する必要に迫られています。同時に、竹喬の初出作品も、この一年の間にかなりの数が確認されています。
このたびの企画は、このような状況をいわば速報的に紹介しようとするものです。そして、今秋の11月から来春の4月まで、大阪、笠岡、東京を巡回する「生誕120年 小野竹喬展」をより深く理解し、さらに楽しく鑑賞するための、いわば導入的な構成となっています。ご遺族から寄贈された《若竹之頃》、《雲湧く》など、初公開作品を中心とする50点の本画、昨年度額装された60点の素描、これに画業を回想した原稿や後援者野村一志宛の書簡類、さらに竹内栖鳳など愛蔵の絵画作品を含めた多岐にわたる内容をじっくりと味わっていただければ幸いです。
小野竹喬作<春暖>昭和38年頃 笠岡市立竹喬美術館
自然の微妙な変化に向けられた竹喬の柔和なまなざしが、自らの画業を内省する厳しい目となり、己自身に向けられていることを改めてご確認ください。
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