タイトルにある「Stitch(ステッチ)」とは、「針を運ぶこと」という意味です。この言葉から、あなたは何を思い浮かべますか?
多くの人が想像するのは、手芸やニードルアート、もしくは伝統的な刺繍工芸や民族衣装を彩る刺繍などでしょう。本展で展示される作品は、ともすればそうした共通理解を裏切るものかもしれません。
ここで紹介する作家たちは、時間や記憶を定着させたり、自己の内面をえぐりだしたり、油絵やドローイングとは異なる描線を得たりするために、針と糸を表現の媒体としています。「Stitch」は、作家が自身を表現するために一針ごとに行う決断の集積です。そしてそれは、誰にも身近な素材によって作られているからこそ、感触や制作に費やされた時間の長さなどを身体感覚として理解でき、表現に対する新鮮な驚きや、見ることの喜びをもたらします。
本展の舞台となるのは、個人の邸宅として建てられた庭園美術館。異なる表情を持つ展示室に、それぞれの作家が独自の作品世界を織り出すインスタレーションにもご期待ください。
竹村京
《A.市とW.市で上がって行く知っている人びとと知らない人びと》
2007年
日本製絹糸、イタリア製合成繊維、白黒コピー、カラーコピー
高橋コレクション
Courtesy of Taka Ishii Gallery
村山留里子
《The virgin》
2007年
ミクストメディア
個人蔵
Photo: 木奥惠三
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI
〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
TEL:03-3443-0201