カメラは玩具(おもちゃ)でしょうか。携帯電話のボタンをちょっと押してみて、凡庸な現実の一瞬をとらえる、そんな瑣末な行為が写真(フォトグラフ)なのでしょうか。今日、写真撮影は浅薄で短絡的な表現へと傾き、単なるスナップ写真の撮影と同化しようとしています。やがて、写真画像の認識自体も即席の知覚(スナップ・パーセプション)、つまり画像のうちに「現実の」対象を知覚するだけの、一瞬の視線となってしまうのでしょう。写真とは本来、「Photo光-graphy描」つまり光による描画とされていたはずです。しかし、カメラが日用品となりゆく現在、同時に、写真に備わっていた神秘は、日常の娯楽になり果てるその瀬戸際にあります。そして、写真画像もまた、現実の物体(モノ)の残像になってしまう。日常が吐き出す廃物(ゴミ)になろうとしているのです。
「非実在のフォト・グラフ」展は、日常生活あるいはその廃物(ごみ)としての写真に抵抗する試みです。しかしその一方で、本展が展示する作品では、日常と廃物そのもののうちにこそ、写真固有の想像力が求められています。非現実を探し出すと言っても、教会やUFO発見の場所へは向かわない。そうではなく、極めて現実的であり、凡庸とさえ見える、そうとしか見えないようなものへと入り込み、探索を進めることで、非実在の写真が現れるのです。「非実在のフォト・グラフ」は、「日常と廃物を撮った写真」を使って「日常と廃物となった写真」を乗り越えるのです。
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