11世紀のペルー北海岸、バタングランデ地域。古代アンデス文明の中でも、きわだって個性的な文化シカンが最盛期を迎えていた。長大な灌漑用水路、驚くべき彫金細工。こうした遺跡はシカンがいかに壮大な文化を育んでいたかを物語っている。とくに黄金と青銅を用いた高い水準の彫金技術は、コロンブスが新大陸に到達する以前の南北アメリカ諸文化の中でも卓越していた。その後、1千年の時がたち、巨大な神殿ピラミッド群は放置され、風化し、崩壊しつつあった。
1978年、島田泉教授(現南イリノイ大学教授)は、それまであまり考古学者に顧みられてこなかったシカンの人々の世界に1人で足を踏み入れた。以降30年間にわたり、おぼろげだったシカンの人々と文化のアウトラインを徐々に明らかにしていくのだった。
島田教授はシカン文化学術調査団(PAS島田団長)を組織し、1991年日干しレンガでつくられた巨大なピラミッド、ロロ神殿横に眠る墓を発掘した。この墓にはシカンの支配者層の男性と同時埋葬の4人、100点を超す儀式用の黄金の装身具を含む1.2トンという大量の遺物が埋められており、20世紀後半有数の発掘とたたえられた。その後も、ロロ神殿西の墓の発掘による、被葬者のDNA分析(98-99年)、シアルーペ遺跡における金属と土器の工房の発見(99、01年)、さらに2006年のロロ神殿スロープ脇の墓の発掘など多数の調査を手がけ、シカン文化の全体像を復元する研究を続けている。
本展覧会では、30年間の島田教授とPASの最新の研究調査をもとに、ペルー国内にある貴重な考古遺物、約200件や発掘現場の映像やCGを3D化したシアターでシカン文化の全体像を示す。
《シカン黄金大仮面》 11世紀初期
ペルー文化庁・ペルー国立シカン博物館蔵
撮影:義井 豊
《さかな象形土器》 11世紀
ペルー文化庁・ペルー国立ブリューニング博物館蔵
撮影:義井 豊
《黄金の御輿》 11世紀
ミゲール・ムヒカ・ガヨ財団/黄金博物館蔵
撮影:義井 豊
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