このたび、新生堂におきまして、水墨画家、山口英紀の個展を開催いたします。
山口は1976年千葉県木更津市生まれ、筑波大学大学院を修了後、中国へ留学。
現在は高校の国語教師の傍ら制作活動を続け、書・画・篆刻の三位一体の作風から、現在は絹本と紙本とを巧みに使い分けながら、工筆による高精度の再現性を誇る水墨表現を繰り広げます。
山口が描く水墨画は、一般的に連想されるそれとは決定的に異質な表現がなされます。
現象としての滲みがもたらす墨の表現特有の味わいを極限まで抑え、徹底して対象をリアルに描き切った作品は、一見それが水墨画には見えず、写真と見紛うほどに緻密な描き込みがなされています。
都市の俯瞰風景やコンビナートなど、硬質な景色を主題として取り上げることで、山口が持つ精巧な描写力が際立つ一方、時おり墨の表現らしいぼかしや滲みが加えられ、水墨画としてのリアリティも深遠に残されます。
新生堂では2008年1月に続いて2回目、同年秋に開催され、数多くのアートファンの注目を集めた青山スパイラルでの「ULTRA001」以降では初めてとなる同展では、都市を描き、彩色が施され、薄い和紙を何層も重ねることで写真技法の「逆アオリ」と似たぼかしの効果がもたらされた「空虚で均質な時間.」をはじめ、赤ちゃんの頃の自分を抱く祖母の写真をもとに昭和の空気感を表現した「願わくば」、のんきに伏せながら愛嬌のある目をこちらに向ける犬を描いた「白光」など、新作を中心に一部旧作を交えた9点前
後の作品を展示いたします。
イメージを大きく覆し、水墨表現の可能性を更新し続ける山口の独創的な世界をご覧頂けますよう、心よりお願い申し上げます。
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-30