和田は自ら撮り溜めた写真、物体、メモや過去の作品をモチーフとし、ボールペンやインク、カラーペンを用いた細密な描線が特徴的なドローイングを制作しています。
今年三月に上野の森美術館で開催された「VOCA」展に選出されるなど、京都市立芸術大学大学院在学中より精力的に制作活動をしてきました。
児玉画廊においてはグループショーのシリーズ"Ignore Your Perspective"や若手育成枠である"Kodama Gallery Project"での個展、アートフェアなどでこれまでも断片的に紹介して参りましたが、本展は昨春の大学院修了を経た和田の東京での初の個展となります。
何気ない光景やそこでおこっている現象に視線が奪われるという和田にとって、描くこととは、日々蓄積されていくそれら記憶が、意識下において現実に見たままではない"捉え難い何か"としてふとした拍子に顕在化し、自らの中に留め置き難い混濁したイメージと対峙すべく行われる作業です。
紙やパネルに描かれる細密な描線により構成された画面は、和田が無意識下でおこなわれたモチーフのイメージの変容を確認し描き出した痕跡だといえます。
記号に近い状態にまで簡略化されたモチーフが、自らの記憶を整理すべく淡々と描かれたそのおびただしい数の描線の集約によって浮かび上がり、どこか静寂でありながら、ざわめき立つような"妙な気配"を纏ったその作品の質感からは、独特の空気感が感じられます。
観者がそれらのドローイングを前にしてどこか不可思議な印象を受けるのは、描き出された画面から、そのモチーフに"否応無くまとわりついてる日常生活の気配"を感じ取ることが出来ないからかもしれません。
頭の中にあるイメージは和田自身の操作により幾つかの要素が取り除かれ、独特なフレーミングにより切り抜かれます。
そして観者は展覧会タイトルである「sleep / motif」というテーマにまさに共感を得るこ
とになります。
本展におきましては、ドローイングと和田がモチーフとする写真や物体を空間に配したインスタレーションを発表致します。
窓をテーマに制作された百点組のドローイングスイートなど以前からシリーズで制作されている室内を想起させる作品の他、庭や外壁といった部屋の外側を想起させる作品、ドローイングのモチーフになっている日常の光景を映した写真、何気ない物、それら全てを並列に配置することにより、空間全体に和田の独特の世界観が表出することでしょう。
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