遥かな古代から清代にいたるまで、絶え間ない発展を続けてきた中国のやきもの。その自由な造形性や永久不変の性質を生かし、さまざまな器物が作られました。なかでも陶製の「明器」や「俑」は、当時の人々の生活や死後の世界観が表現された貴重な遺産ということができます。明器は実用性をもたない副葬用の器物、俑は人や動物を象った人形のことです。死後も生前と変らない生活を送るという考えに基いて作られたもので、死者が用い、あるいは死者に供奉する役目があるとされています。古代の王侯貴族は豪華な墳墓を築き、従者や家畜の俑、調度品や建物などの模型を作り、明器として墓に納めたのです。
「加彩武人」 後漢?西晋時代(2?3世紀)
漢や南北朝、唐時代のやきものの明器は、今日美術品として世界中で愛好されていますが、これらが広く知られるようになったのは、20世紀初めのことです。中国における鉄道敷設工事にともない、洛陽や西安郊外の地下墳墓が開かれ、そこに眠っていた陶俑や唐三彩などが姿を現したのです。質朴で力強く、あるいは優美な造形性をそなえたこれらの出土品は、中国国内の学者をはじめ、欧米や日本の芸術家・収集家たちに注目され、高く評価されるようになりました。静嘉堂の古明器・陶俑コレクションもこうした時流のなか、大正?昭和初期に形成されたものです。
本展では、質量ともに世界有数と言われる静嘉堂文庫美術館の唐三彩コレクションの名品を中心に、黒陶や加彩灰陶、漢時代の緑釉陶器などをあわせ、貴族文化の栄華を伝える作品の数々を展示いたします。動物の一瞬の動きをとらえた造形や、夢幻的な三彩釉の色彩など、古代の息吹を宿すやきものの世界をお楽しみ頂けます。
「三彩嘶馬」 唐時代(8世紀)
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