月岡芳年(つきおか・よしとし、大蘇芳年とも、1839?92)は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師です。
鎖国の世から突然の文明開化を求められた動乱の時代の中、激しい個性に満ち溢れた作品を次々と生み出し、しばしば「最後の浮世絵師」とも称されています。
武者絵や戯画で知られる歌川国芳の下で浮世絵を学んだ芳年は、武者絵や歴史画、美人画などさまざまなジャンルで活躍しました。
当時の人気は随一で、名実ともに明治時代を代表する浮世絵師と言うことができます。
迫力ある構図が特徴で、血みどろ絵と呼ばれる残酷な表現や女性の妖艶さを捉えた美人画などの魅力は、時代を越えて現代の私たちをも惹き付けて止みません。
本展覧会では、芳年の晩年の代表作であり、また今でも非常に人気の高い傑作、「風俗三十二相」と「月百姿」のシリーズを、前期後期に分けて全点紹介いたします。
明治の巨星・芳年が最後に辿りついた境地は、浮世絵ファンならずとも十分にお楽しみいただけることでしょう。
「風俗三十二相 うれしさう」 飛んでいる蛍を見事に捕まえて嬉しそうにはしゃぐ芸者
■「風俗三十二相」?官能性溢れる美人画
さまざまな身分や職業の女性たちを描いた、全32枚からなる美人画です。嬉しそう、寒そう、痛そう、などといった、女性たちの心の内の感情を意欲的に表現しようとしています。官能性を帯びたその表情や仕草は、現代の私たちでも一見して共感できる魅力を放っています。明治21年(1888)の作。
「月百姿 吉野山夜半月」 天狗の化け物を相手に全く恐れずに会話をしている豪胆な伊賀局
■「月百姿」?幻想的な歴史画
月にちなんだ物語や説話を題材とした、全100枚からなる歴史画です。平安時代や戦国時代の武将たちや絶世の美女、幽霊や妖怪、滑稽な戯画など、同じ月でもそのジャンルは驚くほど広範囲に渡ります。芳年ならではの視点から切り取った迫力ある構図の作品がある一方、月夜の静けさがしみわたるような静謐さ漂う作品もあり、見る人を飽きさせないでしょう。明治18?24年(1885?91)の作。
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