暁斎の作品は現代の多くの漫画家に影響を与えています。
政治漫画の牧野圭一氏(*当館開催「暁斎プラスワンシリーズ? 牧野圭一《平成放屁合戦絵巻》」展のページ参照)、妖怪漫画の水木しげる氏が暁斎作品からのインスピレーションを受け取っていますし、最近も、TVアニメ「地獄少女」や連載マンガ「tactics」に暁斎の妖怪図が直接引用されたり、「ONEPIECE」の表紙画に暁斎のイメージが影響を与えたことが知られています。本展は、そうした現代の漫画家にも影響を与えている暁斎作品の魅力を探る展示です。
河鍋狂斎筆「放屁合戦絵巻」肉筆画巻 紙本墨画淡彩2巻 慶応3年歳暮 各28.2×897.0
上巻「惺々狂斎画」、下巻「図之供主人一笑 惺々狂斎」
「放屁合戦」の源は、平安時代の絵仏師・定智が描いた前半が「陽物(男性性器)競べ」で後半が「屁ひり競べ」の「勝絵〔かちえ〕」絵巻とされる。本図はその「屁ひり競べ」の伝統を受け継いだもの。芋を食べて戦が始まり、合戦は徐々にエスカレートして医師の診察場面まで登場する。暁斎は伝統の画題にアイデアを盛り込んで、曲芸のような放屁場面も描き、現代マンガに通じるような躍動的でスピード感あふれる作品となった。本図が制作された慶応3年暮は、大政奉還と戊辰戦争の狭間であることから、暁斎の時代に対する風刺精神が込められた作品とみることもできる
日本には古くから「勝絵絵巻」や「鳥獣戯画」「百鬼夜行図」「大津絵」といった現代の漫画やアニメに通じる古典がありました。暁斎は、そうした古典を学び、さらに北斎の挿絵に見られるような爆発表現や国芳が錦絵に描いたダイナミックな身体表現を研究するとともに、幕末から明治へと庶民の間に湧き上がったエネルギーを取り込んで、躍動感あふれるエネルギッシュなイメージを作り上げたのです。
本展では、暁斎の創り上げた愉快な、あるいは劇的な作品40点余を、「勝絵絵巻」「妖怪画」「大津絵」「黄表紙的表現の応用」「ダイナミックな身体表現」「爆発表現の発展」「群像表現にみるエネルギーの爆発」「キャラクターの創造」という9つの視点で展示し、暁斎の魅力あふれる作品をお楽しみいただきます。
なお、同時に特別展「暁斎プラスワンシリーズ? 牧野圭一《平成放屁合戦絵巻》」展も開催中です。
河鍋暁斎筆「暁斎楽画第三号 化々学校」大判錦絵、沢村板、明治7年 5月展示
こちらも妖怪たちの開化バージョン。明治7年に出版された大判錦絵「暁斎楽画」シリーズのひとつ。明治5(1872)年に学制が施行され、現在のような西洋式の教育が実施されるようになった。本図はその新様式の学校で学ぶ妖怪たちを描く。鍾馗の先生が鬼の子供たちに掛図を遣って「針山」や「金棒」を教えたり、河童の先生が河童の子供たちに黒板で「SHI RI CO TAMA」などローマ字を教えている。その一方、校門では一つ目小僧や三ツ目、ろくろ首などの妖怪たちが門前払いをくわされている。楽しいながら、暁斎の風刺精神が表れている作品。
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