オープニングレセプション: 2009年5月16日(土)18:00-20:00
村山留里子は1996 年より「色のおしえ」と題した個展を都内各所で行い、2001年に「オプ・トランス!」(KPO キリンプラザ大阪)では、自らが染め上げた生地を細かく縫い合わせた大作(H:300cm×W:500cm)を出品し注目を集めました。
02年の個展「奇麗の塊」(ナディッフ)でビーズ、造花、アクセサリー、人形などを即興的に組み合わせた作品を発表、03 年にはコム・デ・ギャルソンやプラダとコラボレーションし、ファッション界でも一躍話題になりました。
続いて04年、『奇麗の塊』とファッションを融合させた作品『Untitled』(ビスチェ型作品10 体)、『愛のドレス』を続けて発表し、また05年に山本現代での個展では、「彼の世へ続く風景」という展覧会タイトルのとおり美しくも妖しい『奇麗の塊』のシリーズで、新たに幻想的で密度の高い世界を展開し、シリーズを押し進めました。
06、07年には身体を象った漆に「奇麗」を融合させた新作を発表。
その他、ボローニャ現代美術館(イタリア)、金沢21 世紀美術館(金沢)、青森県立美術館(青森)、府中市美術(東京)などで行われたグループ展でも新作を発表するなど、精力的に活動しています。
今回、山本現代では新作立体と、布の作品をご紹介いたします。
一見するとただ黒い布が吊り下がっているように見える新作はマントになっており、内側にびっしりとビーズ、リボン、造花、スパンコール、ボタンなど様々な色、質感、形で埋め尽くされています。
マントは防寒具として世界各地で着用され古い歴史を持っています。
その後、権威を表すため豪華になり、ファッションとして発展しました。
現在ではヒーローや超人などの英雄、または怪人、怪盗、魔法使い、ドラキュラなど正体不明の怪しい者を表現するために多く使われます。
まるで主人を亡くしたマントに苔が生えるように、漆黒のベルベットの内面に溢れる色彩は、美しく怪しさを増し、浮かび立つ様はさながらきらびやかな亡霊のようでもあります。
一方、布作品は自身で化学染料を使用して染めた絹を細かく裁断し、縫い合わせるという単純な作業を延々と行い4m50cm 四方の大きな布を、7000 枚の破片から作り出します。
色と色の衝突は見るものの視覚情報処理を麻痺させ、脳を混乱、もしくは動きを停止してしまうような圧倒的な迫力があります。
二つの異なった作品はどちらも「過剰」という言葉が当てはまりますが、後に続くステートメントのとおり性質は異なります。
「過剰に装飾することでゼロにする」と村山が言うように、作品は度外れの密度を保ちながらも、情念から切り離された潔さを感じます。
「奇麗」の集合体が華美にも不気味にも無にも感じられる作品を是非この機会にご高覧ください。
Untitled, 2008 H450xW450cm Chemical dye silk Photo: Mitsuru Goto
今回展示するのは布作品と新作のマントです。
もちろん二つとも私の作品ではありますが、まったく異なったモノです。
まず布作品は、「染色」「縫う」といった行為から連想される工芸的観念を否定的に捉えるのではなく、あえて正統な手法を用いて一定のクオリティを保つことで、物語性やイメージ、嗜好を排除してゆくことを念頭に制作しています。
それは自分の中で神話のように根付く手仕事への思い込みや意味を、解放することへつながっていると考えています。
淡々と作る時にただ感じ取れるのは、色を見ている自分とその時に生じる生理的な感覚だけで、それを拾い上げながらただただ作業を続けていきます。
もう一つの作品はマントを身体になぞって制作した「黒いマント」。
布作品とは対照的にあらかじめたくさんのイメージを用いての作品です。
過剰に装飾する事で、逆に意味を持たない装飾へと変化させています。
本能的にただひたすら眼で装飾を楽しむ行為は、私の作品には欠かせない要素でもあります。
今回はマントの内側にほどこす事によって、さらに想像力がもたらせるとよいです。
村山留里子
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15-3F
TEL : 03-6383-0626
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