群馬県富岡市に生まれた福沢一郎(1898?1992)は、フランス留学中にシュルレアリスム絵画の影響を受け、その手法を日本に紹介した画家として美術の歴史に足跡を残しています。しかしその後も社会風刺や文明批評を盛り込んだ作風で、94歳で亡くなるまで、大きなカンヴァスを前にして旺盛な創造力を発揮した画家として我々の記憶に刻まれています。
「福沢は海外旅行のたびに大きく画風を変化させる」といわれたほどに、福沢は海外での取材旅行によってさまざまな主題を得ています。
1950年代の中南米旅行では、ジャングルで暮らす原住民の姿に触発されて、人間の根源的な生命力を、黒い輪郭線とこれまでにない鮮やかな色彩で表現しました。
1960年代にはニューヨークのハーレムの黒人を取材し、反逆精神と野性的なたくましさをもった人間の姿を速乾性のあるアクリル絵の具で素早くとらえています。
その後72歳でギリシャを旅行し、ギリシャ神話をモティーフに人間への賛歌を表し、翌年には一転して地獄をモティーフとする連作を始めています。
《ニンフと牧神》1970年
福沢一郎の大画面に繰り返し描かれたのは、生命力あふれる人間の姿であり、その多くは画面いっぱいに絡み合う群像として描かれています。
明治から平成に至る時代を生きぬいた画家のまなざしをたどれるよう、今回の展示では、所蔵作品のほかに伊勢崎市と富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館の協力を得て、当館では所蔵していない晩年の作品を加え、展示室5の壁を埋め尽くすように、初期から晩年までの作品約65点を展示いたします。
福沢の画風の変遷と大画面の迫力をパノラマ展示でお楽しみください。
《敗戦群像》1948年
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