民藝運動の創始者として知られる柳宗悦は、仏教と縁が深い茶道の精神は民藝運動と一如であるという信念の上に立ち、「茶」の世界においても独自の仕事を展開しました。
他力美の具現ともいえる民衆の雑器から、茶器にふさわしい品々を見出した初期の茶人たち。
柳は、彼らを「眼」の先駆者と見なしました。そして、「茶」の本来の意義は生活で美を味わうことであり、「茶」の精神を現す茶器には、「無事の美」を宿す美しい器物を選び用いる事が肝要であると説いたのです。これは、自らが提唱した美の他力道ともいえる民藝美論を実証する道と重なり、美と生活を結ぶ民藝運動の念願とも合致するものでした。
柳自身は「茶」の道に入ることはなく、終始「在野の人」として茶の真義を語りながら、形骸化した茶道への警鐘を鳴らしました。そして、1955年には自らの理念に沿った新しい「茶」の創造的試みとして、日本民藝館で始めての茶会として第一回「民藝館茶会」を催し、1958年には「新撰茶器特別展」を開催したのです。
本展では、この時に用いた器物や、「茶」に関する柳の著書で紹介された茶器を中心に、柳の書した茶人の資格を問う「点茶心指」や、茶道観を表した「茶偈」(茶に関する短文の句)の書、自らが考案した茶道具等、日本民藝館所蔵の優品の数々を展示紹介します。
茶碗2種 左より河井寛次郎(1960年頃)、濱田庄司作(1955年)
茶碗 大井戸茶碗・銘「山伏」 朝鮮時代 16世紀
千里・万博公園内 大阪府吹田市千里万博公園10-5
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