恐ろしい風貌や不気味な姿で現れ出る生き物など、私たちは、人間を超えた力や人間ではない存在を様々な物語やイメージによって表してきました。
そこには、自然災害や政治権力による抑圧などの不安に対して、鬼や妖怪といったキャラクターを創り出し、それを語り描くことで、乗り越えようとする人々の思いが反映されているとも考えられています。
このような想像上の不気味なものたちが存在する世界について、人知を超えた混沌とエネルギーが溢れる場所と捉えられ、この世と一線を画す数々の世界=「異界」が考えだされてきました。
nishio:
西尾康之 《幽霊(冬)》
2007年
Photo: 木奥惠三
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI
現代になり、科学や技術の発達によって、かつてとらえきれないと思われた世界が次第に明らかにされてきましたが、一方で環境破壊や政治経済をめぐる不安など私たちを取り巻く世界には、未だ解決することのできない問題が溢れています。
本展は、かつて異界や異界にすむものたちを表した人々の想像力と同じように、不安や未知の領域を表すことによって現代を投影する、日本をはじめとするアジアの現代美術に着目します。
展覧会では、伝説として語り継がれてきた妖怪 を描いた絵巻や、祭事に使われた面などの歴史・民俗資料も同時に展示し、時にユーモアをもって不安や不条理に向き合う、生活の中から生まれた逞しい創造力を伝えます。
「どろどろ」や「どろん」という言葉は、お化けや妖怪が現れたり消えたりするさまを表してきた言葉です。
本展では、「異界」という世界観を通じて、現代美術を歴史・民俗の世界と繋げ紹介します。
加藤泉
《無題》
2008年
撮影:渡辺郁弘
Courtesy of the artist and ARATANIURANO
▼出品作家
会田誠、八谷和彦、加藤泉、風間サチコ、小山田徹、ホセ・レガスピ、中原浩大、西尾康之、エコ・ヌグロホ、小谷元彦、チウ・アンション、佐藤允、高木正勝、戸谷成雄、アピチャッポン・ウィーラセタクン
〒732-0815 広島市南区比治山公園1-1
TEL:082-264-1121
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