本展は、日本でもっとも親しまれている仏像のひとつである国宝の阿修羅像が、同時期に造られた興福寺の八部衆と十大弟子像とともに展示され、天平彫刻の傑作を堪能できるまたとない機会です。
また、2010年に創建1300年を迎える興福寺では、江戸時代の火災で焼失した金堂再建を核とする天平伽藍の 復興を目指しており、本展には新しい中金堂に安置される仏像群、創建当時の金堂に由来する鎮壇具なども出品されます。
本展は、第1章「興福寺創建と中金堂鎮壇具」、第2章「国宝 阿修羅とその世界」、第3章「中金堂再建と仏像」、第4章「バーチャルリアリティ(VR)シアター」で構成します。
第1章 興福寺創建と中金堂鎮壇具
明治7年(1874)、中金堂基壇中から、創建時に地鎮のために埋納されたと考えられる金・銀・真珠・水晶・琥珀・瑠璃(ガラス)・瑪瑙(めのう)などの 七宝で作られた各種製品と銅鏡、刀剣など、1400点あまりの鎮壇具が出土しました。
さらに、明治17年(1884)にも同じ場所から銀鋺、水晶玉など 21点が出土しました。これほど大量の鎮壇具が出土するのは稀であり、いずれも優れた工芸品であることから国宝に指定されて、現在、前者は東京国立博物館 に、後者は興福寺に収蔵されています。
また、最近の中金堂の発掘調査でも、創建時の鎮壇具と考えられる遺物が出土しています。今回は、東京国立博物館所蔵 品、興福寺所蔵品、最近の発掘調査での出土品を一堂に集め、中金堂創建にかかわる鎮壇具の全容が初めて明らかになります。
第2章 国宝 阿修羅とその世界
光明皇后は、母の橘三千代が天平5年(733)に亡くなると、一周忌の供養のため興福寺に西金堂を建立し、釈迦如来、釈迦の十大弟子、四天王、八部衆像な どの28体の像、また菩提樹や金鼓(こんく)などの荘厳具を安置しました。
釈迦の浄土を立体的に表したものです。この章では、そのうち現在まで伝わる、十大弟子と八部衆、金鼓(華原磬《かげんけい》)を展示します。
八部衆の少年のような清々しさ、十大弟子の醸す静寂さは、天平彫刻の特徴である写実表現の中 でも最も優れた作品群です。
国宝「八部衆像 阿修羅立像」
脱活乾漆造、彩色 奈良時代 天平6年(734)
奈良・興福寺蔵
国宝「八部衆像 迦楼羅立像」
脱活乾漆造、彩色 奈良時代 天平6年(734)
奈良・興福寺蔵
第3章 中金堂再建と仏像
享保2年(1717)の火災後、文政2年(1819)には仮金堂が建てられました。この堂は近年解体されましたが、昭和50年(1975)に講堂跡に再び 建立された仮金堂には、本尊の釈迦如来坐像、薬王・薬上菩薩立像、四天王像が安置されています。
現在、興福寺では平成22年(2010)にに中金堂再建の立柱を予定しており、完成後に、いまは仮金堂安置の諸仏が移されることになっています。このうち 釈迦を除く各像が展示されますが、いずれも興福寺の鎌倉復興期の作で、四天王像は運慶の父康慶の作です。
このほか注目の出品作品として、焼失した西金堂の 旧本尊釈迦如来像の頭部と、その光背に付けられた化仏(けぶつ)、飛天などがあります。これらは最近見出された信頼のおける史料から、運慶の作と考えられるものです。
重要文化財「釈迦如来像頭部」
木造、漆箔 鎌倉時代 文治2年(1186)
奈良・興福寺蔵
第4章 バーチャルリアリティ(VR)シアター「再建中金堂と阿修羅像」
本展では、VR技術により阿修羅像を完全にデジタル化し、像の鑑賞・理解を助ける映像展示を行います。また、現存しない中金堂もVRにより再現し、再建に先駆けてその様子をご覧頂けます。
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