オープニング: 2月21日午後6時より
垣谷はドローイング、音響、映像等による作品を一つのインスタレーションとして発表してきました。
2006年児玉画廊|東京において発表した「20 members」を期に、展覧会の構成と作品のコンセプチュアルな側面のリンクを明確に顕在化することで、垣谷ならではのスタイルを獲得したと言えます。
20本の短編映像それぞれが独立したキャラクターを与えられており、全体として一つのグループでありながらも、個々が主張し合うことで空間内の調和は複雑化します。
「20 members」がコンセプチュアルな視点での全体と個の総和と対比であったとするならば、続く2007年「discordant affair」では、むしろ異なったメディアの作品を同列のものとして配した時必然的に起こる不整合はあえてそのままに、不安定さの中から生まれる「観念のすきまやほころび」へとそのテーマを発展させました。
そして昨年10月、児玉画廊(京都)のこけら落としとして開催された「うそつきとわからずや」において、簡潔に言うならば差異やズレにまつわる垣谷の一連のテーマがより内省的な方向へと移行します。
「うそつき」「わからずや」という人格を表すこれらの言葉が暗に示すのは単に垣谷が作品に投影するキャラクター的な意味合いだけでなく、作家自身や我々見る側の者全ての杓子定規な認識や当たり前の感覚に対するカウンターとしての意味合いを含んでいます。
画廊空間内の地下ピットで暴れ回る音響、まったく動かない動画、ぺらぺらの紙に描いたドローイングを映し続ける映像、ぼんやりと人物を投影するスライド。
全ての要素が漠然とした違和感に包まれているという事だけが明確に感じられるその空間は、虚偽と誤解に満ちて、怖いようなしかし戯けているようでもあり、そうした判断すらもはぐらかされてしまうこれは一体何なのか。
少しの疑念が全てを狂わせて、ついぞ自分に問いかけざるを得ません。
自分は果たしてうそつきか、わからずやか?
今回の「stains stray」はそうした一連の流れを汲んで、文字通り彷徨う、シミのごとくぼんやりとしたもの、即ち、結局うそつきともわからずやとも分からない自身や他者、全ての事象に対する意識や感覚の行方を追っています。
映像、スライド、音響の作品に加え、新作のドローイングによる構成となりますが、垣谷の本分の一つであるところの展示構成において、児玉画廊|東京の特殊な空間構造に対してどのような回答を提示してくるのか、ぜひご期待頂きたく存じます。
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