小西真奈の描く絵画は実在する場所を不可思議な風景として描くことで知られていますが、今回は昨年より取り組み始めている人物をモティーフにしたポートレイト(=肖像画)の作品を発表します。
約10年ぶりにポートレイトを描く上で、人物をメインに描くということは同じ絵画制作において風景を描くこととどんな違いがあるのか、という素朴な疑問から出発しています。
小西は制作において、「絵画のおもしろさというものは、1つ筆をおくことで、次に進むべき方向へ導かれていくこと」だと言います。
「物語性というものは意図したものではないが、観る人によっていかようにも読むことはできる」とも言います。
小西真奈の絵画は、実際に自身が被写体と現実に対峙することで描きたい強いイメージを見つけ出し、さらに撮影した写真によって二次元の画面に収め、それらを構図に用いて描きます。
写真にすることで体感したイメージが俯瞰され、被写体が持っている様々な情報の中から掴み取りたいものだけを選びだすことでよりイメージが明確になり、独創的な世界を描き出します。
この「ポートレイト」のシリーズは、自身や知人など身近な人物を肖像画というアカデミックなスタイルで描いています。
これら描かれるポートレイトは、どこか危うい表情をし、何かものいいたげな表情をしています。
あむ 2008, oil on canvas h.23 × w.23 cm
撮影:渡辺郁弘
赤ちゃんや可愛い子供がどこか皮肉な表情や成熟した挑発的な視線をしていたり、日常的な表情なのに喜びともいえない謎の微笑みを浮かべたりと、小西の描く肖像はどこかアンバランスな雰囲気を生み出します。
事実(見えるもの)とその奥底にあるもの(見えないもの)が共存するアンバランスな世界こそ、小西真奈の思い描くこの世の真実であり魅力かもしれません。
今回の試みは、この普遍的な何かを絵画表現によって描き出そうという作家の、新たな可能性への挑戦といえるでしょう。
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