【作品紹介】
増井淑乃は、細密な背景と動物とを取り合わせた水彩画を描きます。
無数の点と曲線のつながりがオブセッショナルに画面を埋め尽くし、その造形は森の中のようにも、花のようにも、あるいは増殖し続ける細胞のようにも見えます。
小さな相似形の組み合わせとその繰り返しは、一見装飾的にも見えますが、作家曰く「自分自身の業」とも言うべき、逃れられない不穏な気持ちを投影しているのかもしれません。
2006年の初めての個展では、紙の上に水彩絵の具をたらしてその形に沿って模様を描いていく、オートマティズム的な手法をとっていました。
今回は画材と支持体は変わらないながらも、地を塗ってから時間をおいて、下絵を描かずに何度も重ねて描いていく画面は、にじみによって出来る偶然の効果と意図的に描き込まれた描線のコントラストによって、より複雑さを増してきています。
? Yoshino Masui, 2008
描かれる馬や烏などの動物たちは、作家が実際に競馬場に通い、身近な存在として観察してきたものです。
「犬やら猫やらを兄弟代わり親代わりにしており、何時間も後ろをついてまわっていた」という作家の子供の頃の原風景が、鮮やかな色彩と独特の手法で浮かび上がります。
本展では、新作絵画約8点を展示致します。どうぞこの機会にご高覧下さい。
【作家プロフィール】
増井淑乃は1976年静岡県焼津市生まれ。
1999年、多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。
現在東京を拠点に制作活動を行っています。
2004年のGEISAI#6にて、小山登美夫がスカウトしました。
2006年の個展に続き、今回が2年ぶり2度目の個展となります。
小山登美夫ギャラリー
東京都江東区清澄1-3-2-7F
03-3642-4090