「山水境」100F 紙本彩色 2008
「山水が好きで。近づくどころか同化してみたい」と語る加藤良造は、自身の心を惹きつけて止まない山水の世界を画面の中に追求し続けている画家です。
彼の書く風景画は、中国宋初の董源(とうげん)や巨然(きょねん)の青緑山水画を想起させ、また昨今のポップ・アートやイラスト、アニメ、マンガを交ぜ合わせた作品がもてはやされている現在のアートシーンの中にあって一線を画し、特異な存在として意外なほどの新鮮さを放っています。
「山水境」60P 紙本彩色 2008
しかし、董源らの古典描法である"ふへきしゅん"や"ひましゅん"などに範を得た彼の技法は、いまだ未熟で未完成の感は否めません。
彼が手本にした画家たちの精妙な画境に近づくためには、彼らに見倣って通俗的なものから距離をおき、自然との交感に努め、ひたすら筆を動かし続けるしかないのかもしれません。
絵は、発表した瞬間から、必ずどこからか批判の矢が飛んできます。彼の絵も当然過去の名作との比較からさまざまな論議を呼ぶことは間違いありません。
いずれにしろ、絵はその時代の所産であり、それ故画家は殊更過去の名作におもねり畏縮する必要はなく、今、己が呼吸し、感じたまま表現をすることで画家は絵と一体となるのでしょう。
今回の個展はそうした日々の精進を素直に世に問う機会でもあります。
「山水境」50F 紙本彩色 2008
今年6月には、新進画家の支援を目的とした全国公募展「第4回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾展」で大賞を受賞するなど、今後の更なる活躍が期待されています。
2年ぶりとなる今回の個展では、新作を含む約10点を展示する予定です。
彩鳳堂画廊
東京都中央区銀座6-7-7 第3岩月ビル3F
TEL:03-3575-0960