hpgrp GALLERY東京では、日本を拠点に活動するアメリカ人写真家、マイケル E. J.スタンレーの新作展を開催致します。
*オープニングレセプション: 9月5日(金) 19:00-21:00
「コトサヘク」、この聞き慣れない言葉は、「遠いかすかな音」という意味の古語で、それが転じて万葉集などで韓や百済(くだら)など言葉の通じない「外国」にかかる枕詞として用いられるようになりました。
大学で考古学を専攻していたスタンレーは、1979年より日本に滞在し雑誌やテレビといったメディア、ジャーナリズムの世界を通じて日本の歴史や文化を深く理解してきました。
日本の各所に残る風景をより客観的に、また歴史的検証に基づいて撮影し、この国を理解、表現しようと試みるスタンレーの作品には、風景としての美しさはもちろん、モノクロの緊張感と豊かなトーンで捉えたモチーフを通じて、文化が歴史や時間の集積の上に成り立つ事を再認識させ、現代の日本から見れば「コトサヘク」な世界であるかつてのこの国の風景を蘇らせます。
真実を写す「写真」、photo(光)でgraph(描く)するphotograph(写真)、日本語と英語の写真という言葉には、根本的な認識の違いがありますが、どちらも的確にその機能を言い表しています。
現存する風景を素材とし、歴史という光で日本の原風景を写し出すスタンレーの手法は、「写真」と「Photograph」という概念を見事に体現しています。
移動手段やインターネットの発達に伴い、世界の距離がますます近くなる今日、即物的なグローバリズムの影で忘れられた、遠くの微かな声を聞き取ろうと耳を傾ける時間。
作品の中に息づく雄大な時間の流れと、いにしえの原風景をぜひこの機会にご高覧ください。
<アーティスト・コメント>
ことさへく―古代の日本の言葉で「かすかに聞こえる遠い声」のこと。
初期の日本の文学においては、さらに「異国らしさ」のニュアンスが加わる。
“消えてしまった日本の相貌”を描きだそうというこの写真プロジェクトには、「ことさへく」はどちらの意味でもふさわしい言葉だ。
日本が歴史の舞台に登場したころのこの島々は、歴史に記される後の日本とは大きく異なっていた。
私はそんな時代を思い起こさせる場所や事物を探し、かつて存在し、今やすでにない日本の島々と海の姿の表象を、それらのイメージを集めたモザイクとして作ってみようと考えた。
ここに展示した写真は、これまでに撮り集めたイメージのごく小さな断片にすぎない。これらは“制作途上の作品”へのイントロダクション、進化し、育ちつつあるものへの導入なのである。
マイケル E. J. スタンレー
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
TEL:03-3406-0032
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