©Takagi Masakatsu 'Tidal' (2007)
1979年生まれ、京都府出身の高木正勝は自らが旅先で撮影した映像の加工やアニメーションによる映像制作と、ピアノやコンピュータを使った音楽制作の両方を手がけ、CDやDVDのリリース、展覧会やコンサートなど幅広い活躍で知られています。
今回の展覧会では「Lava」(2008)と「Tidal」(2007)の2作品をご紹介いたします。
これらは高木の魅力の一つである「溢れんばかりの色彩」が他の作品に比べ極端に少なく、新たな一面を見せています。
「Tidal」は、少女の顔と髪の毛のみの要素によって構成されていますが、高木の持つ「光」を捉える能力、それを表現する力が多分に発揮され、躍動感のある浮遊した世界に、見る者を引き込みます。
絵の具で描かれたような肌質の少女の表情からは、ある種の「死」が読み取れますが、その恍惚から、
ベルニーニの「聖テレサの法悦」のように、生から死に至る悦びを彷彿とさせます。
生死の境界線の曖昧さを称えたこの少女の映像は、三分弱と短い作品ですが、深く脳裏に焼き付く忘れがたい精錬なイメージです。
「Lava」は、人体と周囲が溶け出していく静謐な映像で、あらゆる境界線が融解していくような作品です。
二項対立的なものの捉え方が意味を持たない世界観―西洋のそれではなく東洋的な宗教観―を思わせます。
様々な映像作品が発表されるなかで、高木正勝が制作したこの二つの近作は現在最も注目されるべき作品でしょう。
山本現代
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