<展覧会概要>
近年の急激な経済発展に加え、8月に開催される北京オリンピックで話題沸騰の中国ですが、美術界においても今、中国の現代美術が世界中から注目を集めています。
1970年代末に改革開放政策が始まった中国では、美術の世界でも社会主義リアリズム絵画とは異なる表現が現れました。
1979年には“星星画会”が展覧会を開催し、美術家の個性を前面に打ち出した自由な芸術活動に先鞭をつけます。
80年代半ば頃からは、中国全土で同時多発的にさまざまな前衛グループが結成され、“八五美術運動”と呼ばれる大きなうねりを形成しました。
彼らは、西欧からの情報流入を背景に、中国が抱える社会的なテーマを、従来の絵画や彫刻のみならず、パフォーマンスやインスタレーションといった新しい手法で表現しました。
蔡國強や黄永?など、活動の拠点を海外に移す美術家がでてきたのもこの頃です。
90年代初めには“ポリティカル・ポップ”や“シニカル・リアリズム”といった一連の美術家が活動を始めて、中国現代美術の存在を国際的に知らしめすことになります。
その後、過激なパフォーマンス・アートや映像作品などが続々と生まれ、現代美術は、2000年以降のグローバル化に連動し、美術市場の活況と国際展の隆盛と共に、中国の開放を象徴する文化のひとつとして認知されるようになりました。
本展は、中国に現代美術が登場した1980年代を出発点に、ここ20年間の流れをたどりつつ、すでに評価を確立した美術家たちから、今後活躍が期待される若手まで、特筆すべき美術家たちに焦点をあてて、その代表作を展覧するものです。
絵画や彫刻だけでなく、パフォーマンスや映像など、さまざまな表現を使って展開されてきた中国現代美術の知られざる魅力をご紹介します。
12.方力鈞《シリーズ2 No.3》1992年、油彩・カンヴァス、福岡アジア美術館蔵
<展覧会の見どころ>
○日本初の中国現代美術の網羅的、通史的な紹介
日本では、90年代半ばから“シニカル・リアリズム”やパフォーマンス・アートの美術家たちが紹介され、2000年代に入ってからは、若い中国人美術家たちの作品も横浜トリエンナーレやいくつかの中国展において展示されました。
しかし、中国現代美術の約20年間を、その時々を代表する美術家たちの作品で紹介する総合的な展覧会は、日本ではこれが初めてとなります。
○現存する美術家による中国国内で制作、発表された作品で構成
中国の現代美術家のなかには、欧米や日本に拠点を移し、そこで高い評価を得た美術家もいます。
しかし、今回の展覧会は、中国国内で制作、発表された作品で構成することにこだわりました。
それは、中国の社会や文化を映し出す鏡として美術を捉え、作品を介して1980年代の改革開放政策以後の中国が歩んできた激動の時代をできるだけリアルに伝えたいと考えたからです。
○貴重な資料もあわせて紹介
今回の展覧会では、当時中国で刊行された出版物や記録映像をあわせて紹介します。とりわけ、中国で初めて現代美術家たちの作品を一堂に展覧した伝説的展覧会、1989年の北京、中国美術館での「中国現代芸術展」の会場風景やシンポジウムの模様は、中国現代美術の熱い時代を生々しく伝えてくれるでしょう。
<出品者紹介>
黄 永? (ホアン・ヨンピン) 1954生まれ
王 広義 (ワン・グァンイー) 1957生まれ
張 培力 (ジャン・ペイリー) 1957生まれ
丁 乙 (ディン・イー) 1962生まれ
張 暁剛 (ジャン・シャオガン) 1958生まれ
方 力鈞 (ファン・リジュン) 1963生まれ
触覚小組(タクティル・アート)
新刻度小組(シンカドゥ・グループ)
顧 徳新 (グ・ダァシン) 1962生まれ
馬 六明 (マ・リウミン) 1969生まれ
張 ? (ジャン・ホアン) 1965生まれ
孫 原+彭 禹 (スン・ユァン+ポン・ユゥ) 1972生まれ / 1973生まれ
楊 振中 (ヤン・ジェンジョン) 1968生まれ
楊 福東(ヤン・フードン) 1971生まれ
曹 斐 (ツァオ・フェイ) 1978生まれ
徐 震(シュー・ジェン) 1977生まれ
国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2