人間の心の奥深くへ投げかけられる“メッセージ”。
フランス現代美術を代表する女性アーティスト、日本初個展
Courtesy: Marian Goodman Gallery Paris / New York
©Marie Clerin
「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」展は、フランスを代表する女性アーティストであるアネット・メサジェを本格的に紹介する日本初の個展です。
彼女が創り出すさまざまな素材を用いたオブジェやインスタレーションは、奇妙で幻想的な世界へ見る者を引き込みます。それらは、彼女の名前“メサジェ”を体現するかのように強烈な“メッセージ”を内包しており、人間の心の奥深い部分へ何かを投げかけてくる「使者」となります。
《噂》 2000-2004年 100x235x43cm 布、縫いぐるみ、紐
マラン・カーミッツ・コレクション、パリ Photo: Marc Domage
→ 一見愛くるしい目のついた身体の一部のようなぬいぐるみたちは、アルファベットでRUMEUR と読める。「噂」によって翻弄される人間の在り様を、ぬいぐるみの人型が物語っているようだ。
メサジェは絵、写真、拾い集めたオブジェ、言葉、ぬいぐるみ、布、編み物などの断片を用いて、聖と俗、ユーモアと恐怖、愛と悲しみ、表と裏など人間の奥深い、相反する感覚を日常の視点からつむぎだします。90年代半ばから現代美術の世界で多用されるようになった素材を70年代からいち早く使用し、個にまつわる物語を作品化してきました。
《キマイラ》 1982-1984年 サイズ可変 アクリル、油彩、白黒写真、メッシュ
Courtesy: Marian Goodman Gallery, Paris/New York Photo: Adam Rzepka
→ ギリシャ神話に登場するキマイラは口から火を吹く怪獣。得たいの知れない生きものが飛び出した一瞬は恐怖を感じるが、それが夢だとわかって安堵するような幻想と現実の世界を示すこの作品は、ホラー映画のワン・シーンを想起させる。
最近では対立するふたつの要素をはらむ人間の複雑さを機械仕掛けの大規模なインスタレーション作品で展開し、特にその評価を高めています。2005年には、ヴェネツィア・ビエンナーレのフランス館代表アーティストとして参加。金獅子賞を受賞し、大きな話題をさらいました。彼女の作品は視覚的にも楽しめる、大規模な作品も多く、現代の若者はもちろん、さまざまな世代にアピールする独特の魅力に富んでいます。
《つながったり分かれたり》 2001-2002年 サイズ可変
コンピュータ、布製自動人形、縄、滑車、電動機、ケーブル、木製槍、布製玩具、布製柱と柵
ポンピドゥーセンター・パリ国立近代美術館蔵 Photo: Adam Rzepka
→ ヨーロッパで狂牛病が発生し、多くの牛が死んだ事実に触発されて制作。家畜と人間の双方の関係を問いかけ、動きを取り入れたインスタレーションで、2002年の「ドクメンタ」に出品され、注目を集めた。
本展はパリのポンピドゥー・センターをはじめ、フィンランド、韓国を巡回した国際展です。森美術館ではメサジェとともに展示作品の選択を行い、ギャラリー空間を生かしたスケールの大きな展示を試みます。
《ふくらんだりしぼんだり》 2006 年 サイズ可変
パラシュート布に着彩、コンピュータ制御の送風機
Courtesy: Marian Goodman Gallery, Paris/New York
→ 脳や胃などの内臓や、足や腕などの外部を模した身体のパーツは、まるでそれ自体が呼吸している生きものように、収縮・膨張を繰り返す。内部と外部、接続と分断、独立と依存など、複眼的なメサジェ独特の視点を身体に重ね、人間の「生」を示す作品。
▼アネット・メサジェ
1943年生まれ。1960年代より制作活動を開始し、70年代以降数多くの個展やグループ展に参加。
2005年のヴェネツィア・ビエンナーレでは、フランス館代表として機械仕掛けの大規模なインスタレーションを発表し、金獅子賞を受賞。
フランスのみならず、現代美術の世界ではかかせない存在となっている。
▼主催など
主催:森美術館、ポンピドゥーセンター・パリ国立近代美術館、朝日新聞社
後援:フランス大使館
助成:CULTURESFRANCE
協賛:株式会社大林組
協力:日本航空、ニコラ・フィアット、ボンベイ・サファイア
日仏交流150周年記念公認イベント
▼入館料
一般1,500円、学生(高校・大学生)1,000円、子供(4 歳以上 - 中学生)500円
森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
Tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)