「果肉(制作中)」 2008
キャンバスに油彩 112 x 162 cm
撮影:宮島径
Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery
この度7月9日より8月9日までミヅマアートギャラリーにて近藤聡乃による2度目の個展「果肉」を開催致します。
本展はすべて油彩の作品で構成されます。
近藤は前回の個展でアニメーション「てんとう虫のおとむらい」を発表しました。1秒は15枚の動画からできており、アニメーションは約3000枚の動画から作られました。
しかし完成後に改めてその3000枚を見返した時、「1枚の絵」として成り立っているものがほとんどないことに近藤は大きなショックをうけました。1枚1枚に絵としての存在感が感じられず、その薄っぺらなものの蓄積であるアニメーションにも違和感を覚えるようになりました。
またコンピューター上で背景と合成された絵の物質感のなさは、今まで何を描いていたのかという漠然とした不安を生じさせました。
3000枚という枚数よりも、存在感のある1枚を描きたい、という思いが絵の具を積み重ねて描いていく油彩に着手するきっかけになりました。
本展のテーマは「人と植物の交わり」です。
それは人間が植物を食べ、逆に食べられ、また果実が人間の内蔵の様子を呈してと、「人と植物の中間のもの」という意味でもあります。
近藤は家とアトリエを行き来する単調な毎日を送っているうち、身の回りの些細なことが気になるようになりました。
道端の植物の成長、気温の変化、自身の体重の変化、なんとなく見た絵や虫が美味しそうに見えたこと、赤い色の食品に嫌いな物が多いこと、果物に対する生理的な嫌悪感。そんな漠然としたことを感じながら絵の具を重ねるうちにその中心にあることが「人と植物の交わり」だと強く感じるようになりました。
近藤には幼い頃に、このようなモチーフでこっそり描いては人にみられないように捨てた絵があると言います。本展の油彩はそんな捨ててしまった絵の一部なのかもしれません。
また今までモノクロの作品を多く制作してきた近藤ですが、今回は色を取り入れています。
2色(朱と紺)色鉛筆や、キャンディー、輪ゴムや軟骨の色など近藤が幼い頃から好きで、ずっと気になっている色が使用されています。
本展を通して今までアニメーションやドローイングでは表しきれなかった、キャンバスに積み重ねられた近藤の内面を少しでも感じていただけることと思います。
この機会に是非ご高覧下さい。
ミヅマアートギャラリー
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