新進気鋭の写真家 12名によるリレー個展
プロデュース:高橋周平(多摩美術大学教授)
企画・監修:大野純一(株式会社総合メディア研究所STING代表取締役)
photalk フォトーク
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彼女たちは優しい。美しくて強くて優しい。
写真評論家/多摩美術大学教授 高橋周平
「許してくれるのです」と、山本寿人は彼女たちのことを語る。それは男の側に立った甘ったれでエゴイスティックな言葉かもしれない。だが、写真を眺めていると、彼女たちの言葉が聞こえてくるようだ。そこに写っているのは、彼と彼女たちの刹那的な関係だ。まさに陽炎のような二人の関係は永続しない。そのときだけの、男と女の赤裸々なエゴが見える。複雑さも感じる。「許す」ということは、納得できることもできないことも、美しいことも醜いことも、すべてひっくるめて乗り越えること。すべてを認め、包み合うこと。それは、あきらめでも逃げでもない。許す、いったん許したのならどこまでも許し続けるということは、思いつく限り一番の誠実な方法だったのだ。
山本寿人は、個人的な男女の関係の中でこれらの写真を撮影してきた。彼らはお互いの生活の中からわずかな時間を捻出し、密室にこもる。会話を交わし、裸になって自分をさらけ出しながら、相手にもさらけ出すことを求める。その時間は、あっという間に終わる。いつものことだし、彼女たちはそのことを十分承知している。山本は、中判カメラとストロボ、アイランプをセットして、彼女たちの気持ちを探る。
作品中、ある女性は彼しか見ていない。彼を見ている自分が、作品となって人前に登場する未来など想像もしていない。だが、彼女は、これらを発表したいと願い出る山本を、結局は許すことになる。ある女性は、山本とつきあう以上、撮影という作業が生じることは自然なことと考えている。しかし中には、それを絶対に許さなかった女性もいる。彼女たちはここには登場しない。どうすることが正しかったのか、誰にもわからない。わかるのは、ただ、許した女性だけが作品となってここにいる、ということだ。
彼女たちは優しい。美しくて強くて優しい。そして山本と関係することで、誰にもまねのできない大きな力を与えている。それはとても神秘的な事柄のように感じる。
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