【作品紹介】
ベンジャミン・エドワーズが描き出すのは、現代のデジタル・テクノロジーを駆使した、架空の建築からなる架空の都市の肖像です。
精緻なコンピューターグラフィックスの下絵が、建築物のサンプルとして膨大にストックされ、それらは1つずつ3Dに投影されながら、やがて壮大な仮想都市となってペインティングの中に姿を現します。
その制作過程は、あたかも私たちを取り巻く情報の洪水や目に見えない規律が、次々と道路や看板、ビルに姿を変えて、新しい都市を構築していくかのようです。
都市の形態を形作るものとは何なのか、そこには生活者の社会行動、消費行動、そこから噴出するリビドーまでも、その機能や意匠へと確実に反映されているのではないでしょうか。
絵画の中に現れる巨大なモニュメントを取り巻く権力の趨勢はすぐに塗り替えられ、ある時は公共施設、あるいは寺院、あるいはオフィスビル、ショッピングモール、とその姿を変えていきます。
CGを基にペインティングを構築していく手法は、新しいテクノロジーと絵画平面という歴史とを往還する、きわめて現代的なアプローチであるとも言えます。
「資本主義者の理想郷(Capitalist Utopias)」や「共和国の起源(The Origins of Republic)」など、ポストモダンを生きる私たちを取り巻くテーマを、作家は繰り返し取り上げています。
? Benjamin Edwards, 2008
【この展覧会について】
「< Democracity >(本展のタイトル)は、1939年の国際万博で発表された有名な展示のタイトルで、未来のアメリカの都市がいかなる様相を呈するのか、を描いていました」(作家談)。
作品タイトルには、ニューヨークで行われたこの万博からの言葉や、建築家ル・コルビジェの言葉の引用などが用いられています。
"Machines for Living" (生きるための機械)、"Freedom through Order" (規律の中の自由)、"Immense Industrial Undertakings Do Not Require Great Men"(巨大な工業事業は、優秀な人間を必要としない)といった言葉は、近代以降、私たちが掲げ続ける民主主義が求めるユートピアとしての都市像を、全く新たな形で浮かび上がらせます。
【作家プロフィール】
ベンジャミン・エドワーズは1970年アメリカ、アイオワ州生まれ。
現在、ワシントンD.C.を拠点に制作活動を行っています。
2000 年、ニューヨークのP.S.1において、初めて本格的にニューヨーク近代美術館(MOMA)とコラボレーション企画展を行った『Greater New York』展では、約150人に及ぶアーティストたちと共に作品を展示しました。
ニューヨークやパリで個展を行い、アメリカを始めオーストリア、スペイン、ドイツなど、世界各国でのグループ展に出展しています。
日本では初の展覧会となる本展を、是非この機会にご高覧ください。
小山登美夫ギャラリー
東京都江東区清澄1-3-2-7F
03-3642-4090