新進気鋭の写真家 12名によるリレー個展
プロデュース:高橋周平(多摩美術大学教授)
企画・監修:大野純一(株式会社総合メディア研究所STING代表取締役)
photalk フォトーク
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東京という、コンセプト
写真評論家/多摩美術大学教授 高橋周平
東京。この街に住みはじめたころ、どうやって馴染めばいいのか、僕は混乱していた。林立する高層ビルをまぶしい思いで見上げながら、「自分の居場所はどこにあるんだろうか」と、期待と不安が入り交じった気持ちに整理がなかなかつかなかった。あるとき、電車の窓からぼんやりと、どこまでも広がる住宅を眺めながら「馴染めたのかもしれない」と感じた。何年もかかった。露木大地のこれらの作品を眺めていると、そのころの気持ちがよみがえる。切なくもあるし、ゆったりと長い夢を見ているような気分もする。
露木は、大型カメラを抱え、東京を隅から隅まで歩いて、これらの美しい作品を一枚ずつ増やしてきた。大きなサイズのポジフィルムは、この1年間の東京の空気を、余すところなく濃密に封じ込めている。こちら側に暗い森があって、その向こうにきらきらと輝くガラスの塔が立ち並ぶ。
露木の撮影スタンスは頑なまでに決まっていて、必ず「公園にカメラを据えて、そこから見えてくる東京の姿」を発見しようとしている。公園は、緑豊かな季節には濃い影を作る。葉を落とし寒々とした樹々の間からその向こうを眺めることもある。そこには決まって、とても美しいビルやランドマークが出現する。東京のまだ知らぬ姿が、こんなに単純なところから立ち上がってしまったと、最初に作品を見たとき驚いたものだ。今もその気持ちは続いている。
この奇妙な対比は、国内はもとより、世界のどんな街を見渡してみても、存在していない。わずかにマンハッタンの一部だけだろうか。ところが東京では、これが日常の風景だったのだ。露木の作品は、都市ランドスケープを通過して、東京を見つめ、東京というコンセプトを明らかにしていく重要な仕事に成長しはじめていると思う。これは露木大地が行き着き、私たち東京に住む人間が心から共有できる「ありのままの東京の姿」なのだ。
ビジュアルアーツギャラリー・東京
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