オープニングレセプション 2008年5月10日(土) 18:00 - 20:00
山本現代では「YAMAMOTO GENDAI Future Feature」(山本現代フューチャー・フィーチャー)と題し、ギャラリー所属作家という堅苦しい枠組みの前段階のかたちで、より自由かつ直感的に、期待の新人や様々な可能性のある作家をみなさまにご紹介してゆくシリーズを行っております。
第4回目は、「第三者」と題し、気鋭の新人作家ふたりを一同にご紹介します。
ひとりは今年武蔵野美術大学を卒業したばかりの小林香織(こばやしかおり)。
もうひとりは大分県で独自に制作を続けている平川なつみ(ひらかわなつみ)。
いずれも本格的な発表は初発表にあたります。
小林香織 「夢と鳥」 2006/油彩、綿布にエマルジョン/h970×w1455mm
一見では手法も素材も全く異なる作家ですが、ふたりのつくる画面には、共通する孤独と疎外感、「いつも・そこに」あるような何気ない風景でありながら不自然で、実は非常に滑稽な、アンファミリアな日常が描かれています。
彼女らの絵のなかで、一人称にも、二人称にもなれない「わたし」もしくは「あなた」が、今回の二人展のテーマである「第三者」としてそこに立ち現れます。
彼女たちの絵にある「第三者」は、滑稽な振る舞いで「わたし」や「あなた」に対して現前し、顔を持ちます。顔をもった「第三者」は、他者としてわたしやあなたの前で動き始めます。
レヴィナスの語る「他者」のように、ここで言う「第三者」は、わたしやあなたとは完全には同化されることがなく、所有され得ないものとしてそこにあります。
「第三者」を了解することは、「第三者」を了解することの不可能性に気づくことであり、その引き裂かれた状況のなかにある「第三者」は、わたしやあなたのなかにある概念的思考の現れです。
この「第三者」の存在に目をつむる者は、暴力的です。なぜならそれは、わたしとあなた以外の存在を認めない行為だからです。
「第三者」を描くことのできる彼女たちの作品は、「わたし」や「あなた」に内在する暴力性を差し止め、気づかせ、認識する、希有な絵画なのではないでしょうか。
平川なつみ 「海辺までやってきた旅」 2007/紙にアクリル/h623×w735mm
不自然なポーズで不穏な空気を醸し出す男女を描きながら、どこか清冽な印象を残す小林香織。
記憶を頼りに白昼夢のような風景や人物を描く平川なつみ。
いつかどこかで見たような風景なのに、いつもどこにもない場所を思わせます。
このふたりの作家は、それぞれ全く違った様相を呈する絵を描きますが、しかしふたりとも、なにげない風景や人物のなかに、本展で指し示す「第三者」を描くことのできる作家です。
山本現代では、今考えられる最も興味深い力を持った新人画家として、彼女たちをご紹介したく考えています。
小林香織
少し違和感のあるすがすがしさ、やさしいような恐怖、不自然なノスタルジー、
そんな説明しにくい気持ちを抱く事があります。
絵を描き他の世界を作ることによって、私が感じる現実を説明したいし、
見る人の潜在意識に少しでも触れたいと思っています。
私は潜在意識とは、簡単にフェティシズムなところにあると考えています。
だから、私にとっては制作は簡単で安易で具体的な事じゃないといけないので、
制作の際には構図にあまり深い意味や動機を与えないようにしています。
唐突なインスピレーション、単にかわいいと思う物、妙な感じがする事、
恐い物、頭から離れないポーズ。
そういった具体的で簡単で、私にとっては鮮明だけれど
一体どこからわいたかわからない物事をモチーフに扱います。
それらを「絵画」としてではなく、見た人の想像を駆り立てるように、
意味は無いが状況はある「シーン」に構成して描こうと意識しています。
具体的だけれど無意味に、制作において、
不安定ながらバランスをとる事が重要だと思っています。
私が感じる現実とは、不思議なバランスで緊張感のあるものだからです。
作品自体、シーンの設定はあるものの無意味な事を集めているので、
ここの作品について何についての作品か説明するのは少し難しい事です。
ただ、言えるとすればどの作品も私の感じる現実についての作品です。
小林香織 プロフィール
平川なつみ
見た夢、景色、考えた事などから、ある種の雰囲気が浮かびます。
浮かんでは消えるその雰囲気の繰り返しによって、
だんだんその雰囲気が自分のイメージや映像とピタッとはまって一つの絵になります。
時間がたって浮かぶものもあれば、受けたその印象のまま描く事も有ります。
とにかく考えることと、生きてるということが、重要だと思います。
生きていれば考えられる、考えられればなにかイメージが浮かぶ、
浮かべば絵が描ける。そういった具合です。
私の場合、きっと普段考えまくってることや、
辛いと感じたことが絵になっている、と思います。
悲しい、せつない感じとか、無常、わびさび、、、
それなのになぜか、かっこいいしおもしろい。
理屈抜きでいい!と、自分で思える絵を描きたいと思っています。
意味とか無いです。
平川なつみ プロフィール
山本現代
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