戸谷成雄 "森化 III" (部分) 2003, 木、灰、アクリル
シュウゴアーツでは戸谷成雄の新作展「ミニマルバロック III」を開催します。
最小限の要素に還元するミニマルと不均衡で装飾的なバロックという両極にあるものをひとつにし、相反する緊張関係から生まれる概念を「ミニマルバロック」と戸谷は名付け、近年シリーズとして制作をしています。
その第三弾となる本展は、ギャラリー空間をいっぱいに使った森シリーズの新作「森IX」とそのためのドローイングで構成されます。
9・11の後、ニューヨークにおいてスーザン・ソンタグが”But let’s not be stupid together”と書いたということをどこかで読んだが、当時のアメリカで倫理と情動の間を揺れ動く人間の危うさを見抜いた言葉に感動した。それは行き過ぎたバロック化の現状に対して、私が造形上の言葉として「ミニマルバロック」を作品の主題としてきたこととも重なるが、ふと気が付くと、「森シリーズ」 I - VIIIも、典型的な「ミニマルバロック」であったと思う。このことを発見した今、封印した「森」を「ミニマルバロック」の彫刻として再開する権利を得た、と思う。
戸谷成雄
かつて「森」の中にある錯綜した構造からバロックを見出した戸谷は、1986年から「森」シリーズとして制作を始めます。
平面性、絵画性の中に立ち上がる、彫刻性とは何か、という問いはシリーズ8作目を最後に中断されます。
行き過ぎた表現の快楽主義に対し倫理性を意識するようになった戸谷は「ミニマルバロック」という概念をたちあげますが、その図式の中に自身の森を再発見します。
シリーズの9作目にあたる「森IX」をミニマルバロックとして発表する最初の展覧会になり、今後の展開を予兆させるものとなるでしょう。
戸谷は1947年長野県生まれ。
1975年愛知県立芸術大学大学院修了。
1988年第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ出品。
1995年、広島市現代美術館にて個展。2000年、第3回光州ビエンナーレに出品。
2003年の愛知県美術館での個展「森の襞(ひだ)の行方」にて、平成15年度文化庁芸術選奨受賞。
非西洋的彫刻の可能性を追求した独自の姿勢によって高い評価を得ています。
「森」というモチーフを再認識しライフワークとしてあらたに向き合う戸谷の新作展にどうぞご期待下さい。
SHUGOARTS
シュウゴアーツ 135-0024東京都江東区清澄1-3-2, 5階
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